おとぎ話(読み)おとぎばなし

日本大百科全書(ニッポニカ)「おとぎ話」の解説

おとぎ話
おとぎばなし

童話。原義は「(とぎ)」のおりに、人の退屈を慰めるために語り合う話だが、転じて口碑による昔話に対して、創作や再話として親しみやすく子供たちに聞かせる話のたぐいをいう。たとえば、「桃太郎」「かちかち山」など。「伽」は、病人や貴人の相手をする意であるが、その「伽噺(とぎばなし)」については種々の説がある。参加の多くの人の眠りを退ける話(柳田国男(やなぎたくにお))とか、夜陰に群がる魔者を追い払う侍者の声づくろい(折口信夫(おりくちしのぶ))、口説(くどき)、夢解き、絵解きの「とき」(荒木良雄、角川源義(げんよし))などである。室町初期に、公家(くげ)・武家などの貴人の側近に仕えてその相手を務める人々を、「御伽衆(おとぎしゅう)」と称して重要な職掌に公認された。戦乱の緊張が、この種の伽を重んじたのであろう。江戸期に入っても、特殊な体験や知識の所有者が召し抱えられて、主人に近侍して雑談の相手をした。徳川3代家光(いえみつ)のころから若殿相手の前髪の御伽衆も多くなり、この制度は江戸末期まで続いた。御伽草子は、伽に用いた草子であり、女性や子供を対象としたものばかりでなく、武辺咄(ばなし)、怪異談も多かったとする。豊臣秀吉の『天正記(てんしょうき)』などもその御伽衆の大村由己(ゆうこ)がつづって、その武勲談を夜伽の席で読み上げたものである。『甲陽軍鑑(こうようぐんかん)』などのお家の武勇伝も同じことがいえる。このような幇間(ほうかん)的な人々の創作も含めて、大人が大人に語った話が、江戸期を経過するうちに、徐々に大人が子供を相手に語る、今日の昔話や童話を意味するようになったのである。

[渡邊昭五]

『「お伽及び咄」(『折口信夫全集10』所収・1966・中央公論社)』『「御伽噺と伽」(『定本柳田国男集7』所収・1962・筑摩書房)』『大島建彦著『お伽草子と民間文芸』(1967・岩崎美術社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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