中世ヨーロッパで広く信じられた伝説的な女教皇。トロッパウのマルティンMartin von Troppau,マイイーのジャンJean de Maillyなど13世紀の年代記作者によって言及され流布した。それらによれば,彼女はイングランドに生まれ,ヨハネス・アングリクスJohannes Anglicusなる男性名でケルンに学び,学者として盛名をはせたのち,855年ころ教皇位に就任,ヨハネス8世を名のったという。一説に行列の途上分娩して女性であることが露見したと伝えられる。なお,タロットの2番目の絵札(大アルカナ)は〈女教皇〉と呼ばれるが,上記の伝説が反映しているのかもしれない。 執筆者:松宮 由洋