翻訳|tarot
22枚の〈大アルカナ〉(アルカナarcanaは〈秘密〉の意のラテン語arcanumの複数形)と呼ばれる絵札と,56枚の〈小アルカナ〉からなる一組78枚のカード。主として卜占に用いる。英語tarotの正確な発音はタローだが,日本ではもっぱらタロットと呼びならわされている。なおフランス語ではタロtarot,イタリア語ではタロッコtaroccoという。〈小アルカナ〉56枚は,それぞれ百姓・貴族・商人・僧侶の4段階に対応する14枚ずつの4組,棍棒・剣・金貨・聖杯に分かれ,その1組14枚がさらに10の数札とキング・クイーン・ナイト・ジャックの4枚の親札からなり,のちにこれだけが独立して近代のトランプの前身となる。ただしタロットのシンボリズムは主として〈大アルカナ〉について論じられることが多く,22枚の絵札にはそれぞれ以下のような数番号と名称がついている。すなわち,1:奇術師,2:女教皇,3:女帝,4:皇帝,5:教皇,6:恋人,7:戦車,8:正義,9:隠者,10:運命の輪,11:力,12:吊るされた男,13:死神,14:節制,15:悪魔,16:神の家,17:星,18:月,19:太陽,20:審判,21:世界,0:愚者である。ただし現在広く用いられているウェートA.E.Waite考案のカードでは8が〈力〉,11が〈正義〉に変えられ,0の〈愚者〉を先頭に置く。タロットの占い方には〈生命の樹法〉〈ケルト法〉等いくつかあるが,輪状配列による方法が〈普遍の鍵〉(パピュス)と称されてオカルティストたちに好まれている。TAROTという文字そのものが輪状に配列されればROTA(輪)またはTORA(律法)のアナグラムとして読むことができ,永遠に回転しつつ世界に変化をもたらす不可視の〈運命の輪(世界輪)〉の象徴となる。(図)
タロットの起源についてはさまざまの説がある。語源はアシュトレト=アスタルテ女神とも,古代ペルシア語のタリスクtariskから派生した古代エジプト語のタルートtarut(〈問いかけられた者。余は答えを切望する〉の意)ともいわれ,後者はナイル川の水の増減を占う卜占装置として発生したという起源説(クール・ド・ジェブランA.Court de Géblin)と結びつく。またタロットの〈大アルカナ〉22枚は,ヘブライ語のアルファベット22文字にそれぞれ対応しているところからヘブライ起源説(E. レビ)があり,さらに古代インドのチェス遊戯チャトゥル・アンガchatur-angaに特に〈小アルカナ〉のデザインを思わせるものがあることから,インド起源説もある。有力なのは,タロットは本来遊戯カードではなくて,一冊の(絵)本だったという推測である。アレクサンドリアの大図書館(アレクサンドリア図書館)が破壊されたとき,世界の秘密を封じ込めた一冊の書物がばらばらに分解されて持ち出された。この寓意図からなる断片を組み合わせると,古代の失われたすべての知識が復元されるというのである。78枚=78ページからなるこの本は,実は〈(古代の)すべての本を封じ込めた本〉であり,これを流浪のジプシーがカードの形式にやつして今に伝えるというものである。したがって組合せの秘密に通じた者は,そこから世界の隠された秘密を自在に読み解くことができるのである。なお,日本の〈うんすんかるた〉との類似に注目する向きもあり,たとえば尾佐竹猛は〈スペインのタロッキーというカルタは,確かに“うんすんかるた”に近い形式である〉(《賭博と掏摸の研究》)と,うんすんかるたのタロット起源を示唆している。
→トランプ
執筆者:種村 季弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
一般にタローとよばれる。トランプ(カード)の前身で、切札(きりふだ)22枚と56枚のカードの計78枚一組である。現在ではトランプ占いなどに用いられる。
[編集部]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…英語ではプレーイング・カードplaying card(略してカードcard)といい,トランプtrump(勝利triumphと同語源)は〈切札〉のことをいう。
[歴史]
カードの起源は東方にあるといわれ,18世紀フランスの神秘学者クール・ド・ジェブランは,カードと密接な関係にあると考えられているタロットのエジプト起源説を唱え,その他チェスと同様にインド起源説,中国唐時代の紙幣起源説があるが,いずれも確証はない。これがサラセン人,十字軍,あるいはジプシーによってヨーロッパにもたらされたといわれ,14世紀イタリアを中心に発達したものと思われる。…
…19世紀末の魔術運動にみずから参加したJ.K.ユイスマンス,A.マッケン,B.リットンらの作家は,魔術そのものを文学の主題に据え,儀式魔術の美学的特性を大いに喧伝した。またタロットが新しくデザインされ,ラファエル前派やフランス象徴主義が隆盛を極めたのもこの時期にあたる。フランスではJ.ペラダンを中心に薔薇十字主義の芸術サロンが生まれ,E.サティの音楽などが作られている。…
※「タロット」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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