ヨーロッパの火薬庫(読み)ヨーロッパのかやくこ

山川 世界史小辞典 改訂新版 「ヨーロッパの火薬庫」の解説

ヨーロッパの火薬庫(ヨーロッパのかやくこ)
powder keg of Europe

ヨーロッパ外交史上,20世紀初頭のバルカン半島に付与された表現。オスマン帝国からの独立を達成したバルカン諸国は領土の拡大をめざして相互対立を深めたが,これにヨーロッパ列強の利害が大きく絡んだ。ロシアを中心とするパン・スラヴ主義とドイツ,オーストリアを中心とするパン・ゲルマン主義である。1913年の第2次バルカン戦争ではマケドニア領域をめぐって,バルカン諸国の利害が激しく衝突西欧ではバルカンの諸小国が対立する状態をみて,「バルカン化」(Balkanization)という用語が生みだされた。この用語には不信腐敗暴力,無秩序といったマイナス・イメージがつきまとった。このイメージは,90年代のユーゴスラヴィア紛争を通じて再生,強化された。

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旺文社世界史事典 三訂版 「ヨーロッパの火薬庫」の解説

ヨーロッパの火薬庫
ヨーロッパのかやくこ

第一次世界大戦前のバルカン半島の代名詞
オスマン帝国の支配権衰退,バルカン諸民族の独立要求,パン−スラヴ主義とパン−ゲルマン主義の対立など,帝国主義の諸矛盾がバルカン半島に集中し,一触即発状況にあったことから,こう呼ばれた。

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とっさの日本語便利帳 「ヨーロッパの火薬庫」の解説

ヨーロッパの火薬庫

第一次世界大戦直前、バルカン半島が国際政治危機焦点であったことから、この地域を示す呼称

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世界大百科事典(旧版)内のヨーロッパの火薬庫の言及

【第1次世界大戦】より

…これは第1次大戦前史における三国協商体制の成立を意味する画期的な出来事であるが,さらに巨視的に展望すると,ドイツの急激な膨張により,かえってクリミア戦争以来の長年にわたる英露両超大国の対立が解消したことを示す,国際関係史上の一大変動であった。
[戦争の原因]
 ところで,第1次大戦の原因としては,建艦競争や三B政策で対立の先鋭化したイギリスとドイツの関係,アルザス・ロレーヌ2州やモロッコの問題をめぐるドイツとフランスの対立関係,オスマン・トルコ帝国の衰退に伴って発生したバルカンにおけるパン・ゲルマン主義とパン・スラブ主義の角逐,またそれと結びついた複雑な民族相克の問題,さらに同盟国(独墺伊)と協商国(英仏露)との対抗関係などがあげられるが,第1次大戦は極東問題やアフリカ分割の問題からでなく,結局は〈ヨーロッパの火薬庫〉といわれたバルカンから発火した。日露戦争に敗れたロシアが対外政策の重心をダーダネルス,ボスポラス両海峡に向けはじめるに及び,国際対立の焦点は極東からバルカンに移った。…

※「ヨーロッパの火薬庫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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