ヨーロッパヤマネコ(読み)よーろっぱやまねこ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨーロッパヤマネコ」の意味・わかりやすい解説

ヨーロッパヤマネコ
よーろっぱやまねこ
European wildcat
[学] Felis silvestris

哺乳(ほにゅう)綱食肉目ネコ科の動物。ヨーロッパヤマネコF. s. silvestrisと、リビアヤマネコF. s. lybicaの2亜種があり、後者を家畜化したのがイエネコであると考えられている。スコットランド、フランス、スペイン、イタリアからシベリア中部、トルキスタンまで分布し、平地から山地の森林に好んで生息する。体長56~70センチメートル、尾長30~38センチメートル、体重3.5~6.8キログラム。体は黄褐色で暗色の帯や斑紋(はんもん)があり、尾は棍棒(こんぼう)状で太い。単独で生活し、ウサギやライチョウが主食で、ほかにネズミや小鳥、シカの子などをとらえ、約0.6平方キロメートルの縄張りテリトリー)をもつ。岩の割れ目樹洞を巣とし、雌は5月ごろ、妊娠期間63~68日ののち、1産2~4子を産む。子の成長は速く、約5か月で独立する。寿命は野生で12~15年とみられている。なお、ときにヨーロッパ産イエネコとの間に雑種ができる。

[今泉忠明]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のヨーロッパヤマネコの言及

【ヤマネコ(山猫)】より

… リビアネコ類は耳が三角形で先がとがり,その背面にふつう白斑がなく,体には原則としてトラに似た横縞をもつ小型のヤマネコで,頭が丸く,吻(ふん)が短く,尾には顕著な黒帯があり,先端が黒い。地中海地方からアジア西部,アフリカ一帯に広く分布し,イエネコF.catusの有力な祖先とされるリビアネコF.lybica,これに近縁でイギリスやヨーロッパにすむヨーロッパヤマネコF.silvestris,南西アフリカにすむ最小のヤマネコのクロアシネコF.nigripes,モロッコから中央アジアのスナネコF.margarita(イラスト),北アフリカから西アジア,東南アジアまで分布するジャングルキャットF.chaus(イラスト),これによく似てモンゴルなどの半砂漠にすむハイイロネコF.bietiがある。 オオヤマネコ類は耳が三角形で先端に長い毛房があり,尾が短く,容易に他のヤマネコと区別できる顕著なグループである。…

【リビアネコ】より

…体長48~62cm,尾長25~38cm,体重3.6kgほどになる。ヨーロッパヤマネコに酷似し,学者によっては同一種とする。体の割りに四肢が長く,四肢と尾には黒い輪状斑がある。…

※「ヨーロッパヤマネコ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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