改訂新版 世界大百科事典 「ロイコ化合物」の意味・わかりやすい解説
ロイコ化合物 (ロイコかごうぶつ)
leuco-compound
リューコ化合物ともいう。ロイコ化合物とは,還元体や水素化物をさすが,とくにキノン類について著名である。建染染料や硫化建染染料はキノン型(または類する型)をとるが,アルカリ性でハイドロサルファイトNa2S2O4で還元するとアルカリ水溶性の還元体(ロイコ化合物)を作り繊維に染着する。繊維上でロイコ化合物を空気酸化しキノン型とし,安定な染色物とする。ロイコ化合物はキノン型と電子状態が異なるため,これを利用し別の反
応(たとえばキリザリンロイコ体のアミノ化)を進めることができる。アントラキノン(実際には2-アルキル置換)をニッケルNi触媒やパラジウムPd触媒を使い水素化すると,ロイコ化合物である9,10-アントラセンジオール(アントラヒドロキノン)が生成するが,この物質は自動酸化され,過酸化水素を発生し定量的にアントラキノンにもどる。この反応は過酸化水素の製造法として非常に重要である。
執筆者:新井 吉衞
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