化学辞典 第2版 「建染め染料」の解説
建染め染料
タテゾメセンリョウ
vat dye
バット染料ともいう.本来,水に不溶の染料であるが,アルカリの存在下で還元して水溶性(ロイコ化合物のアルカリ塩)とし,この状態で繊維に染着させたのち,空気に接触させて酸化し,もとの染料を繊維上で再生させる染法を行う染料.構造的には,インジゴイド染料とアントラキノン染料の二つに大別される.いずれも共役ジケトン構造をもち,これを水酸化ナトリウムアルカリ性下にハイドロサルファイトNa2S2O4で還元してロイコ化合物のナトリウム塩とするが,この操作を“建てる”といい,またこの還元浴を“建浴”あるいは“バット”という.
アントラキノン系染料は,アントラキノン類のほかにこれと類似の縮合多環キノン類を含む銘柄の豊富な部属である.木綿などセルロース繊維を日光や洗濯に対して堅ろう,かつ鮮やかに染めるが,なかでもすべての点で最高の堅ろう度をもち,色調も美しい染料をインダンスレン染料という.また近年,建染め染料の超微粒子化によって連続染色も可能となり,生産性もいちじるしく向上した.インジゴイド染料は弱アルカリ性(アンモニア)で還元できるので,一部は羊毛,絹,ポリアミド繊維,ポリエステル繊維などにも用いられる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報