改訂新版 世界大百科事典 「ロートマン」の意味・わかりやすい解説
ロートマン
Yurii Mikhailovich Lotman
生没年:1922-93
ソ連邦の文芸学者,記号学者。タルトゥ大学教授。1950年代にはラジーシチェフ,カラムジンなどをはじめとする18,19世紀の文学史をおもな研究対象としていた。現在でもロシア文学ならびに思想の研究は続いているものの,60年代以降は何よりもまず記号学の〈モスクワ・タルトゥ学派〉の重鎮の一人として知られている。ソ連における記号学の本格的な始まりをしるす《構造詩学講義》(1964)をはじめ,《芸術テキストの構造》(1970)や《詩的テキストの分析》(1972)のようにもっぱら文学を記号学的に研究したものが多いが,映画,演劇,絵画などの芸術に関する記号学的研究もある。さらに70年前後からは,文化という統一体を問題とし,その統一体のなかで文学や映画といった個々の記号体系をも研究していこうとする〈文化の記号学〉に取り組んだ。
執筆者:桑野 隆
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報