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文学史 ぶんがくし literary history

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

文学史
ぶんがくし
literary history

普通一国文学史を意味する。ある国の文学の展開をその起源から後代まで歴史的に跡づけたもの。この種の試みは実は意外なほど新しく,イギリスでは T.ウォートンによる『イギリス詩史』 (1774~81) が先駆的な仕事で,イギリス文学全体を史的に概観した本格的な試みの最初は,フランスの批評家テーヌによってなされた (1863~64,英訳 73) 。

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出典|ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉の解説

ぶんがく‐し【文学史】

文学の歴史。また、それを研究する学問やそれを記述したもの。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

文学史
ぶんがくし
history of literature英語
histoire de littratureフランス語
Literaturgeschichteドイツ語

文学自体の歴史、またはそれについての叙述。[小田切秀雄]

文学史という概念

文学史の研究はアレクサンドリアの学者から始まり、ルネサンス時代に至ってF・ベーコンが「文学史」という概念を最初に使ったといわれているが、さて、自明のようにみえるこの文学史という概念そのものをめぐって多くの問題がある。まず、文学にいったい歴史などがありうるのか、つまり、文学史などというものが存在しうるのか、という問いを免れることができない。文学作品はそれぞれにまったく個性的な創造で、作品と作品の間や作者と作者との間にはなんの関係もない、作品の一覧表はありえても、文学史は成立しえない――こういう考えはこれなりにさっぱりしていて、このような断定のうえに制作や研究が行われるということは、一理はある。
 しかし、客観的には、一時代または一階級層の作家の間には、個性的な大きな違いと同時に、相似た、または共通した側面があることは、経験的に明らかである。アイスキロスの『オレステイア』(前458)とエウリピデスの『メデイア』(前431)とを読む人は、翻訳を通してであっても、両者が個性的な際だった相違をもつと同時に、等しくギリシア悲劇としての深い共通性をもち、これらをあわせてギリシア悲劇を論ずる、ということすら可能になり、このことも経験的に確かめうることである。はっきりした個性的な相違と時代的・階層的な深い共通点とは、文体や韻律や技法、また素材や主題や構成や主人公のタイプ等々においても、さまざまな形でみいだされざるをえない。しかも、それらの個々の局面で先行作品から強い刺激や示唆を与えられ、または激しく反抗することで新しい制作に進み出る。そのことは諸作家の間で広く存在することであり、諸作品そのものによって立証できる場合が少なくない。文体上、韻律上、また主題や構成のうえでも、先行作品から強い影響を受けて書き、または激しい対決として書く、という例も多い。このようにして、個々の作品または作家においての深浅さまざまなかかわりは、それ自体が史的関係であり、個々のこれらの関係をあわせた総体は、文学史として現れざるをえない。個々の作家はこういうなかで制作し、個性的な特色をつくりだしていく。作者としては、個々のかかわりに対してどうするか、それをどう自覚するか、ということが直接の問題だが、それをつきつめていけば文学史に直面することになる。[小田切秀雄]

文学史のとらえ方

文学史をとらえるためにはさまざまな方法があるが(文学史方法論)、代表的な傾向としてドイツ中心の文献学的および精神科学的方法、フランス中心の実証主義的方法、旧ソ連中心のマルクス主義的方法、という三つの流れがある。
 第一には、まずシェーラーとその学派によって精力的に主張された文献学的方法である。多年の蓄積をもつ古典文献学の方法によって、文学のテキストの厳密で正確な解釈と批評を重ね、これを基礎的な作業にして、そのうえに一方で言語、文体、韻律についての検討、他方で作品の成立史、作者、素材、主題、構成、傾向、影響、改作、読者との関係、行われた評価等々についての検討が進められる。ここでは、印象や思想や精神やで文学を裁断することを退け、科学的研究の段階としての文献学的研究に進むことが可能になった、とされた。しかし、テキストの外面的な諸検討からひとたびその内面にまで立ち入るとき、文献学プロパーではもはや処理できない思想や精神やの領域に踏み込まずにはいられない。やがてディルタイを中心にして発展し始めた「精神科学的」方法は、文学史研究においての思想や精神の重要性を強く押し出し、彼らのいわゆる「理解」の科学的方法としての解釈学的方法なるものに基づいて、体験と表現と理解との構造連関をとらえ、「生」もしくは精神生活の表現の歴史として文学史をとらえようとする。20世紀中葉からのドイツ文芸学のさまざまな主観的・浪漫(ろうまん)的または様式論的などの諸潮流は、すべてがここに発したのではないが、ここから出てきたものが多い。
 第二のフランス中心の実証的傾向は、テーヌによって鮮明に提示されたように、文学を生み出すべき精神状態を規定する基本的条件として人種、環境、時代というものをあげ、その論理自体はやや荒っぽいものだったが、具体的な作品・作家の研究においてはきわめて綿密で、事実に即した精緻(せいち)な分析があった。またランソンは、文学史研究者がなすべきことは、作家が時代、伝統、生活、読書、先行作品などから受けたいっさいのものを探り出して、一つ一つ忠実に記載し、分類し、作品成立のできる限り完全な原因の総和を明らかにすることだ、としている。こういう主張に対しては、これでは作品の周囲は明らかにすることができるが、作品の内部に立ち入っていくことができない、作者自身がなんらかの仕方でそのために苦労したはずの美の問題も思想の問題も置き去りになってしまう、という類の批判がフランスの内からも外からも出た。しかし、フランスの文学研究者のなかに一種の伝統となっている強い実証的精神は、比較文学的な研究などとして生き延びてきている。
 第三の、ソ連中心に発展し始め、ドイツ、日本、イギリスなどで独自な展開をもっているマルクス主義的傾向による文学史把握においては、生産諸関係を社会の基礎構造としてとらえ、そのうえに形成される上部構造の、その一部としての諸イデオロギー、そのなかの文学、という関係位置、被規定性において文学を位置づける史的唯物論の立場にたつ。これは、初めソ連のフリーチェ主義(具体的作品の社会階級的規定性、制約を明らかにすることに熱中した)ないしそれに近い文芸社会学的な文学史観が支配的で、日本その他の諸外国にも強い影響をもった。しかし、やがてルカーチをはじめ諸家によるさまざまな打開の試みが始まり、それは、むしろソ連以外の諸国で発展して、文学がイデオロギーの一部であると同時に、それが時代を超えて古典となることの根拠、また、社会階級的な被規定性だけでなく、それを乗り越えることがありうること、などを明らかにしてきている。
 以上述べたようないずれの思想的傾向にたつにしても、文学の総体の歴史をとらえるということは難事であり、文学史方法論が必要になるゆえんである。なお、個別的な個々の領域での文学史的関係の調査(領域は無限に細分化しうるし、事実の列挙に近づくこともあるが)は、事実による確実な基礎をもち、具体的でおもしろくもあるけれども、総体としての文学史をとらえることの大きな困難に比べることはできない。[小田切秀雄]
『ディルタイ著、服部正巳訳『体験と詩』(1905・第一書房) ▽三木清著『文学史方法論』(1946・岩波書店) ▽ウェレック他著、太田三郎訳『文学の理論』(1948・筑摩書房) ▽小田切秀雄著『文学概論』(1972・勁草書房) ▽ヤウス著、轡田収訳『挑発としての文学史』(1976・岩波書店) ▽イーグルトン著、大橋洋一訳『文学とは何か』(1983・岩波書店)』

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