ドイツの民間伝承で五月祭(5月1日)の前夜をいう。この夜,魔女たちの集会(サバト)がハルツ山地の最高峰ブロッケン山で開かれ,魔王を囲んでの乱痴気騒ぎが繰り広げられるとされ,とくにゲーテ《ファウスト》における描写で有名である。その名は,ボニファティウスのドイツ伝道に従ったイングランドの修道女ワルブルガWalburga(?-780ころ)に由来する。ハイデンハイムの修道院長として活躍し,死後もその墓からにじみ出る油が病気治療の奇瑞をみせるなどした聖女ワルブルガへの崇敬が,キリスト教布教以前の地母神信仰と習合し,聖女の祝日の一つが5月1日であることとあいまって生じた伝承と考えられる。本来は五月祭の宵祭であったものが,異教的なものとしてその価値が減ぜられ,魔女や悪魔が跳梁する夜とされたのであろう。
執筆者:松宮 由洋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…ドイツ中央部に位置するハルツ山地の最高峰。標高1142m。頂上からの眺望はすばらしい。古生層を貫く花コウ岩よりなる。北海からの北西風に直接さらされて年間降水量が1600~1700mmと多く,またそれらが地下に浸透しにくいため,平坦な高原上には広大な湿原が生じ,低地の都市の水源となっている。古来多くの民話の舞台となっており,ブロッケンの妖怪(頂上で太陽を背に立つ人や物の影が前方の霧の壁に巨大な女や妖怪の姿のように映って見える現象)で知られる。…
…【矢原 徹一】
[伝承]
ベラドンナはマンドラゴラと並んで,古くから〈悪魔の草〉と呼ばれ,その強い毒性が恐れられた。悪魔や魔女はことのほかこの毒草をめで,ワルプルギスの夜(魔女たちがブロッケン山に集まって魔王と宴を張ると伝えられる五月祭の前夜のこと)を除いて一年中忙しくこの手入れに励んでいるという。また魔女はこの草を使って人殺しをしたり,サバト(集会)に出かける際には,これを混ぜた膏薬(こうやく)を体に塗って空を飛んだと伝えられる。…
… 魔女の禍いからのがれるには,神の名を唱えながら十字を切ったり,扉に十字を描いたりするものから,鎌や斧のような金属製品,さかさまに立てた箒,パン,塩,火,土などを呪物とするものなど,魔女の魔法にまさるとも劣らぬ迷信的手段が用いられた。ちなみに魔女の力がもっとも強くなるのは,魔女たちがハルツ山地の最高峰ブロッケン山に集合するいわゆる〈ワルプルギスの夜〉(4月30日から5月1日にかけての夜),復活祭とバプテスマのヨハネの祝日(ヨハネ祭)の夜,十二夜,ゲオルギウスとアンデレの祝日で,反対にもっとも弱くなるのは聖金曜日であるといわれる。強くなる日が,いずれもキリスト教布教以前にさかのぼる祝日であることは重要であろう。…
…このため山は思いもかけぬ宝と出会ったり,身の毛もよだつ恐怖にさらされる場所となる。ドイツのブロッケン山でワルプルギスの夜(5月1日の前夜)に魔女たちが集会を開くとされたことは有名である。魔術師は悪魔と山上で会って契約するのだともいう。…
※「ワルプルギスの夜」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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