翻訳|May Day
5月1日の春祭で、いろいろな遊戯や競技を催して祝う。イギリスでは、少女のなかから5月の女王を選ぶ。5月1日の夜明け前の草露(May dew)は美と健康によく、その露で顔を洗うと美人になると伝えられる。また幸運になるともいう。主として北ヨーロッパ各地では前日に火をたき、家、家畜小屋、畑に十字架をかく。魔女、悪霊よけのためである。前夜はブロッケン山に魔女が集まるワルプルギスの夜でもある。この日に放牧を始める土地が多い。種播(たねま)きによいともいう。その一方、不吉な日ともされ、働いてはいけない、パンを焼いたり亜麻(あま)をほぐすと日照りになるという。スカンジナビアの、夏と冬が争って夏が勝つ古伝承が、イギリスのマン島の5月の女王と冬の女王が争う行事に残っていたが、この祭りはそういう相反する力が競り合う時点に位置づけられていた。スイスの花や草木に飾られた5月の花嫁・花婿選びは、1614年に教会から禁止された(イギリスでは1644年)。異教思想のためである。その結果、年長者の行事が子供の行事にすり替えられた。人々はこの日、上昇のエネルギーを招き、人間、家畜、作物の無病息災と豊饒(ほうじょう)を願った。したがってこの日はフランスをはじめとして、愛にかかわる習俗も多い。五月祭は五月柱(Maypole)でも知られる。前夜に立てたモミ、トウヒ、シラカバなどの聖木の周りを、人々は踊り、そこからしばしば新しい愛が生まれた。最近は五月柱を立てるだけであまり踊らない。オーストリアの村では早朝から楽隊が出て祝儀をもらう。五月柱は競売される。
[飯豊道男]
『J・G・フレーザー著、永橋卓介訳『金枝篇1』(岩波文庫)』▽『東浦義雄・板倉恵美子著『英米の年中行事』(1963・研究社)』▽『W・ディーナー著、川端豊彦訳『ドイツ民俗学入門』(1960・弘文堂)』▽『遠藤紀勝著『仮面と祝祭』(1982・三省堂)』
ヨーロッパにおける民衆的な春の祭り。五月祭は古い時代の樹木信仰に由来する。当時,人々は樹木の霊魂が雨と太陽の光をもたらし,農作物を生育させ,家畜をふやすと信じていた。このため,彼らは春になってよみがえった樹木の霊魂の恩恵にあずかろうとして,5月1日に〈五月の樹〉や〈五月の柱Maypole〉を立て,五月祭を祝った。この習慣はイギリス,フランス,ドイツなどヨーロッパ各地に最近まで残り,所によっては今日まで続いている。地方によってその祝い方はさまざまであった。五月祭の前夜,森へ行って切り出した若葉のついた小枝を自分の家の前に飾る地方もあれば,この小枝を花で飾り,五月の歌をうたいながら,みんなで家々を祝福してまわる地方もあった。また,森から切り出したモミや松の大木の枝をはらい,町や村の広場に立て,その先端に掲げた緑の葉に結びつけた紐を手に持って,みんなで柱のまわりを踊り,豊作・豊饒を祈る地方もあった。今日のメーデーの原点である。教会はキリスト教を民衆の間に広めるために,異教時代のこうした信仰・祭祀を禁止することはできなかった。教会は五月祭に近い復活祭5週間後の月・火・水の3日間を祈願節Rogation Daysというキリスト教の祝日と定め,罪の赦しと大地の実りを主に祈る日とした。のちには,復活祭50日後の聖霊降臨祭(ペンテコステ)に〈五月の樹〉を立てて祝う地方も現れ,五月祭はしだいに教会のかさの中にとりこまれていった。なお,5月1日の労働者の祭日については〈メーデー〉の項を参照されたい。
執筆者:三好 洋子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…5月1日,労働者階級の団結と力を示威する国際的統一行動日。毎年この日には世界各国の多くの都市で,いっせいに休業した労働者による大規模な集会やデモ行進が行われる。 その起源は1880年代のアメリカにおける8時間労働制を要求する運動にある。84年に〈労働騎士団〉をはじめとする労働組合が,5月1日を期して8時間労働制要求のゼネストを行うことを決め,第1回の行動として86年5月1日に〈8時間の労働,8時間の休息,8時間の教育〉をスローガンとしてストライキ,デモ行進を行った。…
…古い時代,休日はおおむね祭礼を伴った。異教時代のヨーロッパの休日としてとくに重要なのは五月祭のそれであった。五月祭は夏の到来を告知する祭りであり,五穀豊穣を祈る祭りであった。…
…そうした野生の木は,古代ギリシアの祭りではオリーブであったりゲッケイジュであった。また,ゲルマン人たちの五月祭で森から切り出される木は,シラカバの枝であったりサンザシの花枝であったりし,それらはメー・ポールつまり〈五月柱〉と呼ばれた。そしてこのことは日本でもまったく同様であり,水口祭(みなくちまつり)では山からサカキや松,ヤマブキの花やツツジの花が切り出され,苗代田の水口に立てられた。…
…踊手は伝説上の人物に扮することが多く,ロビン・フッド,その恋人メアリアン,修道僧タックなど,ロビン・フッド物語の人物が最も一般的だが,顔を黒く塗ってムーア人になることもある。五月祭のころに行われることが多いので,新しい季節の到来や生命の復活を祝う,祭式的な意味をもっていたと考えられる。現在も各地に残っている。…
…長編詩《農夫ピアーズの夢》(1360年代から90年代)の中にすでにその名が現れるし,15世紀の多くのバラッドに歌われている。15世紀ごろからイギリス民衆の間に流行した舞踊〈モリス・ダンス〉では,踊り手がロビン・フッドや部下に扮する習慣があり,とくに〈メーデー〉(五月祭,5月1日)は〈ロビン・フッドの日〉と呼ばれ,祝祭行事の一つとして彼に扮して踊って芝居をする。16世紀には彼を主人公とする多くの戯曲が,例えばマンデーAnthony Munday(1553?‐1633)などによって書かれた。…
※「五月祭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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