ワンデル勧告(読み)ワンデルかんこく

改訂新版 世界大百科事典 「ワンデル勧告」の意味・わかりやすい解説

ワンデル勧告 (ワンデルかんこく)

社会保障に関し占領下に来日したアメリカの社会保障調査団(団長ワンデルWilliam H.Wandel)の報告書のうち勧告部分をさす。同調査団は1947年8月に来日,2ヵ月余り滞在したが,その後12月1日にGHQに報告書が提出され,48年7月15日に日本政府に送達された。第1部現行社会保障制度概観,第2部勧告,からなる報告書(邦訳《社会保障への勧告》)は,まず現行諸制度を分析し批判を加えたうえ,第2部で社会保障制度,公衆衛生,病院および診療施設に分けて勧告がなされている。ワンデル勧告の内容は,直接的には政府によって採用されてはいない。しかし当時日本では調査団もとり上げた社会保険制度調査会の〈社会保障制度要綱〉(答申案)が公表されていたし,48年に同調査会が現行の社会保障制度審議会(1949発足)に法制化されたのは,この勧告による。ことに社会保障制度審議会の〈社会保障制度に関する勧告〉(1950。いわゆる第1次勧告)が日本の社会保障の出発点になった事実からすれば,ワンデル勧告は第2次大戦後の社会保障成立史では欠くことができない。たとえば懸案の5人未満事業場への被用者保険の適用問題では,適用業種を列挙するやり方よりも全体をいちおう適用範囲に入れたうえで除外例を決めるやり方の勧告などは,老齢年金における賦課方式の勧告,医師の診療報酬問題などの部分とともに,今日でも教えるところが多い。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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