日本大百科全書(ニッポニカ) 「三酸化二ヒ素」の意味・わかりやすい解説
三酸化二ヒ素
さんさんかにひそ
diarsenic trioxide
ヒ素と酸素の化合物、すなわち酸化ヒ素の化合物のうち酸化ヒ素(Ⅲ)をこのようによぶ。俗称無水亜ヒ酸。天然には単斜ヒ素鉱として産するが、その他白砒(はくひ)、砒石(ひせき)、砒霜(ひそう)、砒華(ひか)などともよばれる。金属ヒ素の燃焼で生じるが、一般に硫化鉱焙焼(ばいしょう)の煙灰として回収され、昇華法により精製される。無色でガラス状のほか2変態がある。蒸気の凝縮または溶液から再結晶すると、立方晶系のものが得られる。As4O6分子が含まれる。135℃で昇華、221℃で単斜晶系に転移する。蒸気密度は800℃までAs4O6分子に相当する。水100グラムに2.0グラム溶ける(20℃)。両性酸化物で、酸にもアルカリにも溶ける。水溶液は酸性で、亜ヒ酸を生じている。ニトロベンゼンに溶け、溶液中ではAs4O6分子が存在する。炭素または水素と熱すると金属ヒ素を生じる。毒性が強く、致死量は0.06~0.2グラムであるが、長期服用により耐性が増す。殺虫剤や薬用となる。
[守永健一・中原勝儼]