不届(読み)ふとどき

精選版 日本国語大辞典 「不届」の意味・読み・例文・類語

ふ‐とどき【不届】

  1. 〘 名詞 〙 ( 形動 ) ( 古くは「ぶとどき」とも )
  2. 道や法にそむいた行ないをすること。不埒(ふらち)
    1. (イ) 不法なことをすること。また、そのさま。
      1. [初出の実例]「薬師寺初任米無沙汰間昨日神人廿人分散郷に付之、不届子細在之間」(出典:大乗院寺社雑事記‐文明一八年(1486)一二月一三日)
    2. (ロ) 礼儀にそむいた行ないをすること。けしからぬことをすること。また、そのさま。無礼。失礼。不都合。
      1. [初出の実例]「其方儀、元手を失ひ、大分金など借りたときいた。ぢうぢうの不届(フトド)き」(出典:咄本・鹿の巻筆(1686)三)
  3. 配慮・注意の行き届かないこと。また、そのさま。不注意。ふゆきとどき。
    1. [初出の実例]「万事不届(フトドキ)なきやう致しますれど」(出典:いさなとり(1891)〈幸田露伴〉三)
  4. 江戸時代、吟味筋(刑事裁判)の審理が終わり、被疑者に出させる犯罪事実を認める旨の吟味詰(つま)りの口書の末尾の詰文言の一つ。所払・追放以上の刑にかかる場合には「不届之旨御吟味受、無申披、奉誤入候」のように詰めた。

不届の語誌

( 1 )中世後期以降、文書用語として用いられたが、近世からは、武士会話の中にも見られる。
( 2 )町人からは、武士の居丈高な態度を象徴する言葉として受けとられていたようで、武士を揶揄する際に用いられることもあった。「滑・八笑人‐初」の「ヲヤなほなほ不届(フトドキ)なことを言上するナ」は町人が冗談に武士の口調を真似たものである。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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