不思(読み)おもわず

精選版 日本国語大辞典 「不思」の意味・読み・例文・類語

おもわ‐ず おもは‥【不思】

[1] 〘形動〙 (動詞「おもう(思)」の未然形に打消の助動詞「ず」の付いてできたもの)
① 思いがけないさま。意外なこと。思いも寄らないさま。
※土左(935頃)承平五年一月七日「このわらは〈略〉となんよめる。かくはいふものか。うつくしければにやあらん、いとおもはずなり」
② 期待がはずれて気にくわないさま。心外なさま。
※枕(10C終)二〇〇「おほきなる木どもも倒れ、枝など吹き折られたるが、萩・女郎花(をみなへし)などのうへによころばひふせる、いと思はずなり」
[2] 〘副〙
① 思いもかけず。意外にも。
※車屋本謡曲・国栖(1534頃)「おもはすも、雲井を出づる春の夜の、月の都の、名残かな」
② 考える間もなくとっさに。無意識に。→おも(思)わず知らず
御伽草子・法妙童子(室町時代物語集所収)(室町末)「おさあひ人なれば、おもはず、わっとなき給ふ」
おもわず‐げ
〘形動〙
おもわず‐さ
〘名〙

おもほえ‐ず【不思】

連語〙 (動詞「おもほゆ(思)」の未然形に打消の助動詞「ず」の連用形が付いたもの。副詞的に用いる) 知らないでいるうちに。思いがけなく。意外にも。
万葉(8C後)六・一〇〇四「不(おもほえず)来ましし君を佐保川の河蝦(かはづ)聞かせず帰しつるかも」

おもわ‐ぬ おもは‥【不思】

〘連語〙 (動詞「おもう(思)」の未然形に打消の助動詞「ず」の連体形が付いたもの。連体詞のように用いられる) 思いもよらない。思いがけない。意外な。
古今(905‐914)恋四・七〇八「すまのあまのしほやくけぶり風をいたみおもはぬ方にたなびきにけり〈よみ人しらず〉」

おもわ‐ざる おもは‥【不思】

〘連語〙 (動詞「おもう(思)」の未然形に打消の助動詞の連体形「ざる」が付いたもの。連体詞のように用いられる) 思ってもみなかった。意外な。
浮世草子本朝二十不孝(1686)二「思はざるよく心おこり」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報