ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「不貞の抗弁」の意味・わかりやすい解説
不貞の抗弁
ふていのこうべん
Einrede der Bescholtenheit
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認知訴訟において、被告である父のほうから、母がその子の懐胎可能な期間中に、被告以外の男子とも情交関係があったと主張すること。かつて判例は、この抗弁が提出されると、原告側が、その事実のなかったことを立証しなければならないとして認知の訴えをきわめて困難なものとしていたが、現在ではこの抗弁を認めず、母が受胎可能な期間に被告と情交関係をもったこと、当時被告以外の男性と情交関係があったとは認められないこと、血液型上の相関性が認められること、そのほか父子関係の存在を推認させる事実があれば、被告側で、母と他男との情交関係の存在を立証できない限り、認知の訴えが認められるとしている。
[山本正憲]
…そこで,今日,子の保護の観点から子の側の立証の負担が軽減されている。かつて,判例は,被告から母親が子の懐胎可能時期に他の男性と性的交渉があったという抗弁(不貞の抗弁,多数当事者の抗弁)が提出されると,子の側が母親と他の男性との間に性的交渉がなかったということを証明しなければならないとし(1934年大審院判決),学説から批判されていた。そこで,今日では〈父子関係〉の存在について可能性が高いと評価できる一定の事実,すなわち,子の懐胎可能の時期に子の母が被告と性的交渉のあったこと,被告以外の男性と性的交渉があった事実が認められないこと,子と被告との間に血液型の背馳がないこと,子を命名するなど,子に対して父親らしい愛情を示す態度をとったことなどが証明されるならば,ほかに特段の事情がないかぎり,被告は子の父と認めている(1957年最高裁判所判決)。…
…改正民法になってはじめて,夫婦平等の義務であることを明記した。
[不貞の抗弁]
認知訴訟において,被告とされた男性から,女性が問題の子の懐胎可能期間中に,被告以外の男性とも性交関係があったと主張することを〈不貞の抗弁〉ないしは多数関係者の抗弁という。明治以降の判例は,この抗弁が提出されると,その事実がなかったことの立証責任を原告たる女性側に負わせたので,勝訴をきわめて困難にしていた。…
※「不貞の抗弁」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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