世界幸福度報告(読み)せかいこうふくどほうこく(英語表記)World Happiness Report

日本大百科全書(ニッポニカ) 「世界幸福度報告」の意味・わかりやすい解説

世界幸福度報告
せかいこうふくどほうこく
World Happiness Report

国連機関が発行する世界各国の幸福度に関する報告。150以上の国・地域について、それぞれの幸福度を数値化したランキングを発表している。2012年から毎年(2014年を除く)発行。ランキング最上位フィンランドデンマークノルウェーなどの北欧諸国が占め、ヨーロッパ諸国が上位に連なる。アジア・アフリカ諸国の順位は低く、紛争国や最貧国下位に並ぶ。主要国の順位(2020年)は、アメリカが18位、イギリスは13位、ドイツ17位、ロシア73位、中国は94位で、日本は公表当初は40位台だったが、徐々に順位を落とし2020年は62位であった。

 世界的な金融危機や環境破壊の経験を踏まえ、国内総生産(GDP)などの経済指標だけでは豊かさや幸福度は表せないとの反省から、国連の調査機関「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」が2012年から集計・分析・公表を始めた。アメリカの調査会社ギャッラップ社が150を超える国・地域のそれぞれ数千人を対象に、考えうる最高のレベルを10、最低を0とする11段階のどのレベルにあると思うかを回答者に尋ねる世論調査を実施、数値化し、過去3年の平均値をランキング化している。この調査結果をベースに、「1人当り国内総生産(GDP)」「健康寿命」「社会的支援」「人生の選択自由度」「他者への寛容さ」「国への信頼度(腐敗を感じる程度)」の6要素を加味して順位付けしている。世界幸福度報告のランキングは、あくまで調査対象の主観的回答を数値化したもので、質問内容も慈善寄付行動を「寛容さ」の目安とするなど、欧米で一般的な価値観に基づいており、欧米諸国が上位となる傾向が強いと指摘されている。

 なお、GDPなど経済的価値だけでなく、精神的な豊かさをも重視する指標には、ブータン第4代国王ジグメ・センケ・ワンチュク‘jigs med seng ge dbang phyug(在位1972~2006)が提唱した国民総幸福量(GNH)、内閣府の生活満足度、内外各種調査機関の幸福度ランキングなどがある。

[矢野 武 2020年11月13日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android