中東の宗教(読み)ちゅうとうのしゅうきょう

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「中東の宗教」の意味・わかりやすい解説

中東の宗教
ちゅうとうのしゅうきょう

中東あるいは西アジアと呼ばれる地域はアラブ諸国 (サウジアラビアイラクシリアレバノンヨルダンエジプトなど) を主とし,若干の非アラブ国 (トルコ,イスラエル,イラン) を含む。現在の宗教事情は,アラブ諸国の多くはイスラムを国教とし,住民の大半はイスラム教徒である。ただしレバノンではキリスト教徒 (主としてマロン派) が住民の約半数に達し,また全域にわたってコプト派教徒,シリア正教徒,ネストリウス派教徒,アルメニア派教徒,ギリシア正教徒,ローマ・カトリック教徒などのキリスト教徒が散在する。非アラブ国では,トルコが政教分離を行なったが,イスラム教徒は依然としてかなり多く,イスラエルはユダヤ教徒が大多数を占め,イランにはシーア派教徒 (イスラム) が多い。これらの地域は7世紀から9世紀にかけて,ムハンマドの出現とイスラム征服の結果として大幅にイスラム化した。それ以前の近東は一般にオリエントの名で呼ばれる。ユダヤ教およびその分枝であるキリスト教,イスラムなどの出現以前は,この地域には多神教が行われていた。ナイル河畔の古代エジプトでは太陽神レーの崇拝や自然神,動物神の礼拝が行われ,死後の世界の信仰とかかわりをもち,メソポタミアではシュメール起源の多神教体系がアッシリア,バビロニアに取入れられた。天体神を中心とする信仰は「バベルの塔」のような神殿を生み,多くの神話,祭式が行われた。他方民間では魔神 (ジン) 信仰のような信仰形体が一神教の登場まで続いた。

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