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政教分離 せいきょうぶんり

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

政教分離
せいきょうぶんり

政治と宗教分離されるべきであるという考え方。 (1) アメリカ合衆国では,憲法上の原則となっている。教会と国家の分離原則 Separation of Church and Stateともいう。この原則は,信教の自由あるいは宗教の自由を保障することを目的とするものである。独立前のアメリカにおいては,ヨーロッパ大陸における宗教的迫害を逃れて来た人々が多かったために,とりわけ宗教の自由の保障が要請された。アメリカ合衆国の独立後は 1789年に憲法修正条項として制定された権利章典 Bill of Rightsの修正第1条によって,イギリスのように国家が特定の宗教を国教とすることが禁止され,また国家による宗教活動の規制も禁止された。この修正第1条は,単純に信教の自由を保障するというものではなく,国家の宗教への介入,国家事項への宗教=教会の介入をともに禁止する,いわゆる政教分離の考え方をとるものとされている。 (2) 日本国憲法においては,その第 20条1項後段に記述されている。これはかつての国家神道を想定したものであるが,その具体的内容としては,国が特定の宗教団体政治的または経済的特恵を与えないこと,および国や国の機関が宗教教育その他の宗教活動をしないことなどがあげられる。第2次世界大戦後の日本の政治史においては宗教政党における政教分離が問題となった。 1964年に創立された公明党は,創価学会を母体にしている。しかし,69年から 70年にかけて言論出版妨害問題が起り,学会と党の癒着が世論のきびしい批判を浴びた。この批判にこたえて公明党は政教分離の方針を打出し,所属議員の学会役職兼任を解き,学会は党の支持団体にとどめるなどを明らかにした。学会側も池田会長が 70年5月の本部総会で,学会と党を制度上,機能上完全に分離することを宣言した。しかし,学会と党との緊密な関係は依然として続いている。

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知恵蔵の解説

政教分離

国家と宗教とを分離させる憲法上の原則。国家と宗教とが未分化で明確に区別されていなかったり、両者が密接に結合している場合、個人の信教の自由は認められない。その意味で、政教分離と信教の自由は表裏一体の関係にある。政教分離の思想は欧米で生まれたもので、近代化と共に非キリスト教国にも浸透していった。日本では明治以来、国家と神道が結びついていたが、第2次大戦後、GHQ(連合国軍総司令部)による神道指令(1945年)で、国家と神道が分離された。政教分離が本格的に確立したのは、戦後発布された日本国憲法においてである。そこでは、宗教団体が国から特権を受けたり、政治上の権力を行使することが禁止され(20条)、財政面でも宗教団体への公金支出が禁止されている(89条)。しかし、首相や閣僚の靖国神社公式参拝に代表されるように、政教分離原則に抵触するとして問題となる事例も少なくない。また、外郭の政治団体を組織する新宗教団体もあり、選挙時には新宗教団体の集票能力に期待する政治家がいるという現実もある。

(岩井洋 関西国際大学教授 / 2007年)

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デジタル大辞泉の解説

せいきょう‐ぶんり〔セイケウ‐〕【政教分離】

政治と宗教の結びつきを切ること。宗教団体が政治に介入することも、また、国家が宗教団体や個人の信仰に干渉することをも禁止するという原則。

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百科事典マイペディアの解説

政教分離【せいきょうぶんり】

国家権力と宗教を分離すること。信教の自由の必要条件をなす。未開社会,古代・中世社会では政治と宗教が一体となり宗教的権威によって支配が行われた。明治憲法は現人神(あらひとがみ)である天皇が臣民を統治する祭政一致の原理に立っていた。
→関連項目教誨師国教宗教法藤林益三

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世界大百科事典 第2版の解説

せいきょうぶんり【政教分離】

政教分離とは国家の非宗教性,宗教的中立性の要請,ないしその制度的現実化であり,これにより,宗教は公権力の彼岸に位置づけられ,〈私事〉として主観的内面性を保障される。
[歴史]
 ヨーロッパにおいて政教分離は一回的できごとではなく,歴史過程のなかで徐々に進行したが,巨視的に見れば三つの画期を指摘することができる。聖職叙任権闘争,宗教戦争,およびフランス革命である。 中世世界においては,国家と宗教(キリスト教)の区別は未知の事柄であった。

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大辞林 第三版の解説

せいきょうぶんり【政教分離】

政治と宗教を分離し、互いに干渉することを禁止すること。日本国憲法は、信教の自由を保障し、国・地方公共団体が、特定の宗教団体に特権を与えたり、宗教的活動を行なったりすることなどを禁止し、政教分離の原則を定める。国教分離。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

政教分離
せいきょうぶんり

国家と宗教とを分離させる憲法上の原則をいう。中世および近世ヨーロッパにおいては、国家と教会、国権と教権が密接に結合していたため信教の自由が認められず、国教または公認の宗教以外は異端として刑罰を含む迫害を受けた。17、18世紀ごろから宗教的寛容と国家の宗教的中立の制度がしだいにヨーロッパ社会に広まり、現代国家においては、政教分離は信教の自由の保障のための憲法原則として広く採用されることになった。
 わが国では、大日本帝国憲法(明治憲法)で信教の自由を認める規定を有していたが、神社神道(しんとう)が実質上国教の扱いを受け、また神道各派および仏教各宗も国家の特別の保護を受けた。現行憲法は信教の自由とともに、厳格な政教分離の原則を定め、宗教法人をはじめとするいかなる宗教団体も、国から特権を受け、または政治上の権力を行使してはならないこと、国およびその機関は、宗教教育や宗教的活動をしてはならないこと(憲法20条)、および公金その他の公の財産は、宗教上の組織もしくは団体の使用、便益もしくは維持のために、これを支出しまたはその利用に供してはならない(憲法89条)ことを定めている。
 これまでに問題となった具体的な例としては、国の助成を含む靖国神社法案(1969年成立)、閣僚の同神社への公式参拝などの靖国神社問題、創価学会の信者を母体とする政党である公明党の政教分離問題(1970)などが議論された。また、三重県津市で公共施設が建設される際の地鎮祭の公費支出について、下級審は違憲の判決を下した(津地鎮祭訴訟)。しかし1977年(昭和52)、最高裁判所大法廷判決では地鎮祭の宗教行事性を否定し、わが国古来の習俗としてこれを合憲とした。以後、この判決は判例として定着した。[山野一美]

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世界大百科事典内の政教分離の言及

【アメリカ合衆国】より

…さらに黒人教会は差別撤廃の政治活動の拠点となり,この伝統は1960年代のキング牧師を指導者とする公民権運動にひきつがれる。 移民の次にアメリカの宗教を特徴づけているのは,建国以来政教分離の原則が確立し,信教の自由が憲法によって保障されていることである。これは1620年のピルグリム・ファーザーズをはじめ,宗教的理由で迫害された人々が,信仰の自由を求めて移住してきた伝統による。…

【信教の自由】より

…宗教的抗争への反省から寛容思想が力を得,国家理念が世俗化して国家の宗教的意味づけを考えなくなるに及んで,国家と宗教は分離し,特定宗教に対する公権力の支持も圧迫もなくなった。それゆえ〈信教の自由〉と〈政教分離〉は不可分である。寛容【渡辺 信夫】
【近代以降】
 17,18世紀のヨーロッパやアメリカの市民革命の憲法思想においては,国家は世俗的利害にかかわり,宗教的関心(魂の救済)にはかかわりえないし,かかわってはならないと考えられた。…

【津地鎮祭訴訟】より

…第二審の名古屋高等裁判所は起工式を違憲と判決したが,最高裁判所は8対5で合憲と判決した。すなわち,その多数意見によれば,〈政教分離〉の対象となる国家と宗教の間には社会的文化的条件からある程度のかかわりあいを認めざるをえない。〈信教の自由〉の確保という根本目的との関係でそのかかわりあいが許されない場合と限度をみつけることが問題である。…

※「政教分離」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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