中規模渦(読み)ちゅうきぼうず(英語表記)meso-scale eddy

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「中規模渦」の意味・わかりやすい解説

中規模渦
ちゅうきぼうず
meso-scale eddy

ソ連が,1970年に大西洋の熱帯海域で行なった観測 (POLYGON) と,アメリカを中心として 71年にバミューダ海域で行なった観測 (MODE) によって発見された直径が 200km内外,周期が 60~80日ぐらいの西進する渦。これらの渦は太平洋北極海でも発見され,世界の大洋はこれらの渦で満たされているのではないかと考えられている。古典的な海洋大循環の理論では,黒潮メキシコ湾流のような西岸強化流帯から遠く離れた外洋深海は,海水の流速がせいぜい1 cm/s 内外の静かな海であろうと予想されていたが,これらの渦により5~10 cm/s の海水の周期的変動が引起されていることがわかった。かつてソ連ではこの渦のことを「深海の嵐」とも呼んだ。成因については,大気における低気圧の発生の機構 (傾圧不安定) と同じではないかという説と順圧不安定によるものだという説があるが,いまのところ究明されていない。

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世界大百科事典(旧版)内の中規模渦の言及

【暖水塊】より

…暖水塊は黒潮や湾流が蛇行してその一部が切り離されて源となると考えられている。このような西岸境界流に伴う渦とは別個に,大洋中に海面から海底まで直立した柱のような大きな渦(直径200km程度)があることが知られているが,こちらはふつう,中規模渦と呼んで区別している。【宮田 元靖】。…

※「中規模渦」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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