翻訳|Arctic Ocean
面積約1400万平方キロでユーラシア大陸、グリーンランド、北米大陸などが囲む。平均深度は約1100メートル。海面の多くが氷に覆われるが地球温暖化に伴い海氷が減少。2012年9月には海氷面積が過去最少となる349万平方キロを記録した。国連の科学者組織は50年ごろにも夏には海氷がほとんどなくなると予測。石油、天然ガスなどの天然資源の埋蔵が有望とされるが、生態系が破壊されると温暖な地域と比べて回復に長期間を要するため、開発反対の声も根強い。(ブリュッセル共同)
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北極点を中心に展開する海域で,北氷洋や北極洋とも呼ばれ,大洋としては最小。中心部に面積約530万km2の北極海盆があり,その南限はユーラシアと北アメリカ,グリーンランドの北岸または最北の諸島のほぼ北岸を連ねる線で囲まれる(国際水路局の定義)。海洋学や海氷の研究上,北極海は北極海盆に接する海域を含めたり,さらにソ連(現,ロシア)では海氷分布に注目し,グリーンランド海などを含めた海域1475万km2を北氷洋と呼び平均水深1225mとなる。北極海盆の隣接海にはユーラシア側にバレンツ海(面積142万km2),カラ海(88万km2),ラプテフ海(66万km2),東シベリア海(91万km2),チュコート海(60万km2)があり,北アメリカ沖にボーフォート海(48万km2),グリーンランドとエルズミア島の沖にリンカン海がある。これらの海も含めた北極海の面積は約1000万km2となる。ユーラシア側には大陸棚が1000km以上も発達し,この上にスバールバル,フランツ・ヨシフ,ノバヤ・ゼムリャ,セベルナヤ・ゼムリャ,ノボシビルスク,ウランゲリの諸島があり,カナダ北極諸島の北半部はクイーン・エリザベス諸島と呼ばれる。北極海盆をアメラシア海盆とユーラシア海盆とに二分するロモノーソフ海底山脈(1948年発見)は幅60~200km,長さ1800kmに及び,海底から約3000m高まっている(最浅部約800m)。北極海盆の地形名称や水深は米ソで異なっている。アメラシア海盆はメンデレーエフ海嶺とアルファ海嶺によってさらに二分され,カナダ側にカナダ深海平原(最深3835m,アメリカ発表),極点側にフレッチャー深海平原(4007m,アメリカ発表)の深海部がある。ユーラシア海盆はガッケリ山脈(最浅400m,ソ連発表。アメリカの名称は北極中央海嶺)で極点側にアムンゼン海盆(最深4321m,ソ連発表。アメリカの名称は北極深海平原),ユーラシア側にナンセン海盆(最深5449m,ソ連発表。アメリカの名称はバレンツ深海平原)がある。北極点の水深は4000~4300mと推定され,まだ精査が必要である。北極海盆の生成は少なくとも中生代以降で,海底山脈の生成は4000万~6000万年前と考えられている。北極海は冬には約1200万km2,夏でも北極海盆を中心に約800万km2の多年性海氷(厚さ3~4m)がある。海氷下には北極表層水と呼ばれる低温,低塩分の水があり,水深約200mから1000mにかけて大西洋水(水温>+0℃,塩分約35‰)がある。大西洋水はスバールバル諸島とグリーンランドの間のフラム海峡から北極海に入り,反時計回りに5cm/s以下の速度で流れ,再びフラム海峡のグリーンランド沿いに流出する。大西洋水の下には底層水が北極海盆を占めており,グリーンランド海で生成され,フラム海峡から流入している。底層の温度は-0.4~-0.8℃,塩分は34.90~34.96‰。水深約1500m以下の底層水の温度は,アメラシア海盆で-0.4℃,ユーラシア海盆で-0.8℃と異なり,ロモノーソフ海底山脈(水深約1500m)の存在に起因する。北極海は冬季約90%が海氷に覆われ,その全体積は2万6000km3に達する。氷山はバフィン湾とグリーンランド海にみられるが,北極海盆にはエルズミア島北岸の棚氷が分離した氷島があるにすぎない。北極海の表面海流と海氷の流動は同じで,流速は10cm/s以下である。極横断海流が東シベリア側から極点を通り,フラム海峡へ向かっている。流速は2cm/sから10cm/sと加速される。アメラシア海盆には流速2cm/s程度の時計回りの大循流がある。これらの海流は北極海の風系に支配されており定常的なものではない。北極海の海氷は最終的にはフラム海峡を通り,東グリーンランド海流に乗って南下する。その量は年間約3000km3となる。フラム海峡から北極海へ流入する海水量は年間約22万km3で,ベーリング海峡からは約4.7万km3が流入する。河川水なども含めた総流入量30万km3の大部分はフラム海峡とカナダ北極諸島間の海峡を通って流出する。北極海は氷に覆われているが,その下に海水があるため気温は大陸部に比べると比較的高い。1月に-30~-40℃,7月には0℃前後である。北大西洋や北太平洋から低気圧が侵入すると降雪を伴い,風速は15~20m/sに達するが,全般的に風は弱い。冬は晴天が多く,夏は曇天や霧が多い。中央部の年間降水量は150~200mmで,ほとんどは降雪によるが北緯70°付近ではまれに降雨がある。北極中心部の気象は氷上の漂流観測所や漂流ブイで観測されている。北極海の動植物は他の海に比べて著しく貧弱である。海氷,日射,海洋の密度成層と低水温などの因子により生物活動が制限されている。炭素同化作用による第一次生産は日本近海の1/100以下である。植物プランクトンは約70種でケイ藻類が主である。近年海氷の底面付近に生息するケイ藻類の重要性が指摘されている。動物プランクトンは約80種で,その中の60種は橈脚(じようきやく)類(コペポーダ)であるが,全世界の橈脚類が1500種あるのに比べ,きわめて少ない。魚類は約30種,海生哺乳類はホッキョクグマ,セイウチ,アザラシ,クジラなどである。
執筆者:楠 宏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
北アメリカ大陸とユーラシア大陸の間の海洋で、地形学的には地中海の一つである。北氷洋ともいう。面積は約1400万平方キロメートル、体積は約1700万立方キロメートル、平均深度は約1200メートルである。
[半澤正男・高野健三]
太平洋とはベーリング海峡によってくぎられている。大西洋とはフュリー・ヘクラ海峡、デービス海峡、およびグリーンランドからスバールバル諸島(スピッツベルゲン諸島)、ベアー島、ノルウェーのノールカップ(北岬)を結ぶ線によって分けられている。冬季はほぼ全域が厚さ2~3メートルの氷に覆われるが、夏季には開水路ができる。
[半澤正男・高野健三]
ほぼ北極点近くを通り、グリーンランド北沖からラプテフ海沖に至る2条の海嶺(かいれい)がある。北極中央海嶺(ガッケル海嶺ともいう)と、ロモノソフ海嶺(深さ1400メートル)である。両海嶺とほぼ平行に、エルズミア島北沖から東シベリア海北部に至るアルファ海嶺、メンデレーエフ海嶺がある。これらの海嶺で分けられて、カナダ北沖にはほぼ三角形の広大なカナダ海盆(最大深度4000メートル)が存在し、スピッツベルゲン、ゼムリャ・フランツァ・イオシファ、セーベルナヤ・ゼムリャを結ぶ線の北沖にはナンセン海盆が存在する。北シベリア北岸沖には幅800キロメートルに達する広大な大陸棚が存在する。
[半澤正男・高野健三]
表面の海流の流速は弱く、毎秒10センチメートルかそれ以下である。おもな表面海流は、北極海中央部をラプテフ海、東シベリア海から北極を通って横断し、グリーンランド北沖に達する北極海流(北極横断皮流ともいう)で、西フラム海峡から東グリーンランド海流となって大西洋に流出する。表面から200メートルまでは表層水または北極水とよばれる水塊で、密度成層が顕著である。この下層300~500メートルには中層水があり、水温は最大値で0.5℃である。塩分はほぼ一様に約34.95psuである。スピッツベルゲン西部からは、0.5~1.5℃と比較的暖かで塩分の高い大西洋水が流入し、北極海を反時計回りに循環している。この下層には低温の底層水がある。大西洋水と底層水の二つの水塊が北極海海水体積の90%を占めている。
[半澤正男・高野健三]
北極海に浮かぶ海氷の量は年によって変わるが、100万立方キロメートルを単位として、冬に0.05、夏に0.02くらいである。その面積は、100万平方キロメートルを単位として、冬に15、夏に8.4くらいである。したがって平均の厚さは、冬で3.3メートル、夏で2.4メートルとなる。東グリーンランド海流、カナダ海流はともに氷山、海氷を伴って南下する。氷山はおもにグリーンランドの氷床から流れ出し、南限はニューファンドランド付近まで達する。北極海の氷山は、上面がでこぼこしているのが多いが、上面が平坦な卓山氷山もあり、氷島とよばれる。氷島には、アメリカやソ連が漂流観測基地として使っていたものもある。北極海の氷は、地球気候との関連からの研究が20世紀の中ごろから盛んとなり、いくつもの国際共同研究が行われている。
[半澤正男・高野健三]
『田沢裕監修『図説大百科世界の地理3 カナダ・北極』(1998・朝倉書店)』▽『フリッチョフ・ナンセン著、太田昌秀訳『フラム号北極海横断記』(1998・ニュートンプレス)』
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…海流も南極大陸をめぐって流れる東向きの周南極海流がある。 なお太平洋,大西洋をそれぞれ南北に分け,それにインド洋,南極海,北極海を加えて俗に〈七つの海〉(全地球上の海の意)と呼ぶことがある。 付属海は,その付属する大洋の海流の影響をうけ,独自の海流はもっていない。…
※「北極海」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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