普及版 字通 「之」の読み・字形・画数・意味
之
人名用漢字 3画
[字訓] ゆく・これ・この
[説文解字]

[甲骨文]

[金文]

[字形] 象形
足あとの形。
(歩)の上半にあたり、左右の足あとを前後に連ねると
となる。足が前に進むことを示し、之往の義。〔説文〕六下に「出づるなり。艸の
(てつ)を
ぎ、枝

大にして、之(ゆ)く
るに象るなり。一なる
は地なり」という。地より
・艸の伸びゆく形として、之往の意を導くが、趾(あし)の進む形。一は境界のところ。そこに跟(かかと)のあとが残るのは出。之を代名詞・語詞に用いるのは仮借であるが、代名詞としては卜文・金文にみえ、語詞の用法は〔詩〕〔書〕にみえ、古くからその義に用いる。[訓義]
1. ゆく、すすむ、いたる。
2. 是と通じ、代名詞として、これ、この。
3. 語詞として、所有格、主語の指示、強意、終助詞に用いる。
[古辞書の訓]
〔名義抄〕之 ノ・カ・コノ・コレ・カクノ・ヨシ・ユク・イタル・イデマス・アヒダ・ヒサシ/久之 ヒサシ
[部首]
〔説文〕六下に
の一字を属し、〔玉
〕も同じ。
を〔説文〕に「艸木
生するなり」とし、土の上に草がはびこる意に解するが、卜文・金文の字形によっていえば、王(鉞(まさかり)の刃部の形。王の儀器)の上に之(趾)を加える形で、往来の
の初文。重大な行事で出発するときに、趾を鉞に加えて清め、その霊威を受ける呪的な儀礼があったのであろう。〔説文〕は次に之の倒文として
(そう)部、また次に出の部を連ね、これらをすべて艸生の象として解するが、これらはいずれも趾の形に従ってその意をえており、
はめぐる、出は強く境界をこえるときの跟(かかと)の迹を加えたものである。[声系]
〔説文〕に之声として寺・事・市・志など八字を収め、また寺(じ)声の十八字もこの声系に入る。事・市は之に従う字でなく、声義の関係もない。
[語系]
之・止tji
は同声。卜文の字形は同じ。〔詩〕の句末助詞に、之・止ともに用いる。已ji
も終助詞。また
tzi
、思si
、哉tz
も相似た用法があり、もと一系の語であろう。[熟語]
之子▶・之児▶・之人▶・之往▶・之適▶・之無▶
[下接語]
久之・頃之・有之
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

