乱流渦動説(読み)らんりゅうかどうせつ(その他表記)theory of Weizsäcker and Kuiper; turbulent hypothesis

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「乱流渦動説」の意味・わかりやすい解説

乱流渦動説
らんりゅうかどうせつ
theory of Weizsäcker and Kuiper; turbulent hypothesis

原始太陽系星雲の乱流渦動から惑星が生れたとする太陽系成因論。ワイゼッカー=カイパー説ともいう。惑星が渦から生れたとする考え方はデカルト (1644) から始るが,近代的理論をつくったのは C.ワイゼッカーで 1944年のことである。彼は,原始太陽系星雲ができたとき,太陽の 10分の1の質量をもつガス円盤が太陽のまわりを乱流状に回っていると考えた。円盤中には,全体の回転運動と逆方向に回る1次渦ができ,1次渦の接点には粘性が働いてボールベアリングの役割を果す2次渦ができる。この2次渦の部分に固体微粒子が集り,重力的に凝縮して惑星が形成される。円環1つにつき1次渦の数を5個と仮定するとボーデの法則をも説明できるという。しかし,テル・ハール (1948) は,規則正しい渦ができるという考え方には無理があることを指摘し,乱流を含めると円盤は重力収縮できず,固体粒子同士の衝突によって惑星が形成されると考えた。 G.カイパー (48) は,テル・ハールと同様の乱流状回転円盤を考えたが,円盤が重力的に不安定で小さな塊ができることを示した。彼はこの塊がぶつかり合い原始惑星に成長すると考えた。この理論の欠点は,高密度の原始太陽系星雲がなぜできるのか,および最初にできた塊がどのような大きさであったのかについて答えることができない点,および原始太陽系星雲では乱流状態が長く続くと思われないことなどである。この説は,遭遇説に傾いていた天文学界を,I.カント,P.ラプラス以来の星雲説に引戻したので新星雲説ともいう。

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