家庭医学館 「乳頭異常分泌と対策」の解説
にゅうとういじょうぶんぴつとたいさく【乳頭異常分泌と対策】
乳頭異常分泌は、乳腺(にゅうせん)疾患全体の5%にみられます。原因疾患としては乳腺症(「乳腺症」)、乳管内乳頭腫(にゅうかんないにゅうとうしゅ)(「乳管内乳頭腫」)、乳がん(「乳がん」)などがあります。
乳頭異常分泌でもっとも問題となるのが、乳がんや乳管内乳頭腫などの、乳管内上皮(じょうひ)の増殖病変の症状であることが多い血性分泌(けっせいぶんぴつ)です。とくに、乳頭異常分泌のうち、血性分泌がある場合を出血性乳房(しゅっけつせいにゅうぼう)といいます。全乳がん中、血性、漿液性の乳頭異常分泌がみられるのは約5%程度ですが、そのうちの半分以上は血性分泌です。
分泌物に対しては、まず潜血反応(せんけつはんのう)を調べ、つぎに分泌物の中の異型細胞や悪性細胞の有無を、塗沫細胞診(とまつさいぼうしん)で調べます。また、分泌物内の腫瘍(しゅよう)マーカーをCEA簡易測定キットで測定すると、乳がんのときにはきわめて上昇しているのがわかります。
血性などの分泌物が出ている乳管口から造影剤を注入し、X線撮影をする乳管造影を行なって、乳管内の病巣の部位や状態を確かめる方法もあります。この乳管造影で発見される乳がんの多くは、乳管内進展型の早期乳がんで、非浸潤(ひしんじゅん)がん、触知不能がん、微小がんです。また最近では、乳管内視鏡検査を行なうこともあります。
さらに、血性分泌があって、前記の各種検査で診断がつかない場合は、分泌物が出ている乳管開口部から色素液を注入し、色素を目印に乳管が所属する腺葉(せんよう)を部分的に切除して病理組織検査を行ないます。この検査で、乳管内進展型の早期乳がん(非浸潤がん、触知不能がん、微小がん)が発見されることが多くあります。