家庭医学館 「乳管内乳頭腫」の解説
にゅうかんないにゅうとうしゅ【乳管内乳頭腫 Intraductal Papilloma】
乳頭近くの比較的太い乳管に発生することが多い病気ですが、末梢(まっしょう)乳管から発生することもあります。
これは、乳管内の細胞が乳頭状に増殖している状態で、乳腺症(にゅうせんしょう)(「乳腺症」)の一部的症状です。
乳管内乳頭腫は良性の腫瘍(しゅよう)ですが、乳がん(「乳がん」)との関連が深いことがわかっています。
[症状]
おもな症状は乳頭からの異常分泌(ぶんぴつ)で、しこりを触れることは比較的少ないものです。
分泌物の性状は、血性のことが50%、ねばりけの少ない漿液(しょうえき)性のことが50%で、水のように透明なこともあります。ふつう、分泌物が下着に付着することで気がつきます。
[検査と診断]
乳管内乳頭腫は、外見からはわかりませんが、乳頭から出てくる異常分泌物の細胞診を行なうと、多数の細胞が群れをなして認められることから、その存在がわかります。
確実に診断するには、乳管造影を行ないます。これは、分泌物が出ている乳管開口部から造影剤を注入し、レントゲン撮影を行なうものです。
乳管内乳頭腫があると、造影欠損像、乳管の閉塞(へいそく)像、拡張像、狭窄(きょうさく)像、断裂像、走行異常などが写りますので、かなり小さいものでも発見することができます。
また最近では、乳管内視鏡を使った診断も行なわれるようになってきています。
[治療]
血性分泌(血液のまじった分泌物)がある場合は、乳管がんとの鑑別がたいせつです。
鑑別のためには、分泌物が出ている乳管開口部から、インジゴカルミンなどの色素液を注入しておき、乳管乳頭腫のある乳腺葉(にゅうせんよう)を、色素を目印にして切除し、病理組織検査を行なって、良性か悪性かを調べます。
つまり、治療と検査をかねて乳腺葉を切除するわけです。
乳管内乳頭腫は、乳がんとの関連が深い病気ですから、乳頭の異常分泌に気づいたら、必ず乳腺専門の外科の医師の診察を受けておきましょう。
また、再発も多いので、治療後も指示された検査はかかさず受けることが必要です。