亀の甲より年の功(読み)かめのこうよりとしのこう

ことわざを知る辞典 「亀の甲より年の功」の解説

亀の甲より年の功

年長者は、長年経験を積んでいるだけに、若者には及ばない知恵や技能がある。さすが年長者だけのことはあると、称賛することば。

[使用例] 「御主人様が是だけのかきおきをお遣わしなさるは何の為めだと思わッしゃる、そんな事をしなさると、飯島の家が潰れるから、やしきへ行く事は明朝までお待ち、此の遺書の事を心得てこれをにしてはならんぜ」と亀の甲より年の功、さすが老巧の親身の意見に孝助はかえす言葉もありませんで、口惜くやしがり、ただ身を震わして泣伏しました[三遊亭円朝*怪談牡丹灯籠|1927]

[使用例] 亀の甲より年の功と云うことがあるだろう。こんないやしい商売はしているが、まあ年長者の云う事だから、参考に聞くがいい。青年はじょうの時代だ。おれもおぼえがある。情の時代には失敗するもんだ。君もそうだろう。[夏目漱石坑夫|1908]

[解説] 江戸中期から用例があり、現在もよく使われています。「亀の甲」は、「功」と語呂を合わせるために引き合いに出されたもので、特に意味はありませんが、亀は長寿とされ、年をとることを「甲羅を経る」ともいうので、ゆるやかにイメージが連なっています。また、語呂を合わせることで軽いユーモアが添えられ、場がなごみ、耳に残る表現になっているといえるでしょう。
 なお、「年の功」を「年の劫」と表記することもありますが、わざわざ難しい漢字にする必要があるかどうか、いささか疑問です。「劫」は、梵語に由来し、途方もなく長い年月をさす仏教用語ですが、ふだん使われるのは囲碁の「劫」と熟語の「未来永劫」ぐらい。ことわざの用例をみると、「年の功」(年齢を重ねただけのことはある)と解して特に問題はないので、表記は「功」でよいでしょう。

出典 ことわざを知る辞典ことわざを知る辞典について 情報

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