事件の核心(読み)じけんのかくしん(その他表記)The Heart of the Matter

日本大百科全書(ニッポニカ) 「事件の核心」の意味・わかりやすい解説

事件の核心
じけんのかくしん
The Heart of the Matter

イギリスの作家グレアム・グリーンの長編小説。1948年刊。第二次世界大戦中のイギリス領西アフリカ植民地が舞台。良心的な警察副署長スコービーは他人の不幸に耐えられない心情の持ち主。撃沈された汽船から救出された若い娘ヘレンと妻との板挟みとなり、汚職偽善に落ち込み、自らの罪ゆえに神をも傷つけている事態を悔い自殺する。神を信ずる人間の悲劇が活写されている。

[海老根宏]

『伊藤整訳『事件の核心』(新潮文庫)』

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デジタル大辞泉プラス 「事件の核心」の解説

事件の核心

英国の作家グレアム・グリーンの長編小説(1948)。原題《The Heart of the Matter》。

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世界大百科事典(旧版)内の事件の核心の言及

【グリーン】より

…この後《ここは戦場だ》(1934),《英国が私をつくった》(1935)のような本格的な小説や,もっとスリラー性の濃い,グリーン自身が〈娯楽物〉と名づける《スタンブール特急》(1932),《拳銃売ります》(1936),《密使》(1939),《恐怖省》(1943)などを次々と発表し,一種痛烈な文明批判を見せた。しかし彼が本格的にカトリック的主題と取り組み出したのは,すさまじい少年ギャングを描いた《ブライトン・ロック》(1938)からで,政治権力に対する信仰の超越性を示した《力と栄光》(1940),純粋な信仰のゆえにかえって破滅するカトリック信者の悲劇《事件の核心》(1948),情欲の苦悩の中から神の存在を発見する《情事の終り》(1951)などを次々と発表した。その後も旺盛な筆力を示し,50年代からは戯曲にも手を染めている。…

※「事件の核心」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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