二俣越(読み)ふたまたごえ

日本歴史地名大系 「二俣越」の解説

二俣越
ふたまたごえ

城端じようはなから福光を経て朴坂ほおざか峠を越え、加賀二俣ふたまた(現石川県金沢市)に至る道。越中南西部地域と金沢城下を最短距離で結んだ。「三州地理志稿」は加州二俣間道と記載するが、一般には二俣越もしくは朴坂越とよび、福光近辺では小又おまた越ともよばれている。「延喜式」兵部省諸国駅伝馬条にみえる坂本さかもと駅の所在地を福光町坂本に比定し、古代の官道がこの道筋辺りを通っていたとする説もあった。だが近年小矢部おやべ市の桜町さくらまち遺跡から古代北陸道とみられる遺構が発見されたことから、この説の信憑性は薄れた。「源平盛衰記」巻二八(北国所々合戦事)によれば、寿永二年(一一八三)五月の安宅あたか渡・住吉すみよし(現石川県小松市)での合戦で木曾義仲軍として戦った石黒太郎は、平家方の越中前司盛俊に射られて傷つき、「朴坂越」で石黒いしぐろに帰ったという。

「越中道記」によると、福光から坂本村まで一二町、坂本村から加賀国境までは一里三〇町で、道幅は三尺。坂本村から国境の間にはおし坂という坂があり、一〇月から翌三月初めまで牛馬も通行不可能となるという。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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