愛媛県松山の郷土料理。卵、ユズ、抹茶などを入れて5色に色分けされた細いそうめんである。伊予藩主久松定行が桑名(くわな)から国替(くにがえ)で伊予に移ったとき、長門屋市左衛門(ながとやいちざえもん)が長門そうめんの名で売り出したのが始まりという。享保(きょうほう)年間(1716~36)に天皇家に献上したところ、五色の唐糸(からいと)のように美しいと賞賛され、それから五色素麺と名前を改めたといわれる。五色素麺は冷やしそうめんとして用いるほかに、タイといっしょにして「たいめん」にすると最上の味となる。これは「めんかけ」の名でよばれるこの地方独特の郷土料理で、冠婚葬祭にはよくつくられる。豪華な陶磁器の皿や高級漆器の大鉢などに大きなタイを皮を破らぬように煮て盛り、五色素麺をゆでて配色よく盛り合わせたものを中央に置き、何人かで囲み、取り分けて食べる。
[多田鉄之助]