そうめん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「そうめん」の意味・わかりやすい解説

そうめん
そうめん / 素麺

小麦粉でつくる細い乾麺。初めの名前は「索麺(さくめん)」であるが、索の字を崩して書いたのが素の字とみられ、素麺と誤記したのがそのまま名称となったのである。中国から渡来したが、その時期は奈良時代とみられている。手延べそうめんと機械そうめんがある。後者は、うどんと同じ製法で、ごく細くつくったものをいう。手延べそうめんの製法は、小麦粉に塩を加えた水を注いで十分によくこね、一晩おく。麺棒で厚く延ばして円盤形にする。これを周囲から太い紐(ひも)状にぐるぐると切り、植物油を塗って桶(おけ)に入れ、しばらくねかす。この太い紐状に切ったものを、さらに植物油を塗りながら撚(よ)りをかけて延ばし、上下に延ばせる枠にかける。これを干し場に出し、上下に引き延ばしながら日光で干し、乾燥させたのち、一定の長さに切って束ねる。こうした操作を手で行うので、手延べそうめんという。手延べの操作で撚りながら延ばすと、そうめんの中心に細い穴ができる。日本農林規格(JAS(ジャス))では、製法および麺の細さや形状から「そうめん」と「手延べそうめん」に区分し規格化している。

 奈良の三輪(みわ)そうめん、大阪の河内(かわち)そうめん、兵庫の揖保(いぼ)の糸、淡路島(あわじしま)のそうめん、小豆島(しょうどしま)のそうめん、愛媛の五色そうめんなど各地に名産品がある。『毛吹草(けふきぐさ)』(1645)には、「山城(やましろ) 大徳寺蒸(むし)素麺、武蔵(むさし) 久我(くが)素麺、越前(えちぜん) 丸岡(まるおか)素麺、能登(のと) 輪島素麺、備前(びぜん) 岡山素麺、長門(ながと) 長府(ちょうふ)素麺、伊予 松山素麺」と出ている。

 手延べそうめんは寒いときに製造したものがよく、曲げてみてすぐに折れず、よくたわむものが良品である。できたてのものよりも梅雨期を経過したもののほうが味がよい。そうめん製造者の間で「厄」ということばがあるが、梅雨期その他なにかの関係で空気中の湿度が高くなると、そうめんは湿気を吸収し、酵素が働いてうま味が出る。しかし、管理がよくないと、かびたり、腐敗したりして品質が低下するので「厄」という。機械そうめんは、つくってからあまり日がたっていない新しいものが風味がよく、長く保存すると味が低下する。

 そうめんをゆでるには、深い鍋(なべ)に水を多く入れ、沸騰したら塩を加え、そうめんをほぐして入れ、蓋(ふた)をし、沸き上がったら水少々をさして箸(はし)でよくかき混ぜ、ふたたび沸き立ったら火を止め、冷水でさらす。冷しそうめんが一般的であるが、煮たのを「にゅうめん」という。薬味には、からしとミョウガネギがあう。中華冷麺風の食べ方もある。そうめんは主として夏の食べ物とされている。

河野友美多田鉄之助・山口米子]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「そうめん」の意味・わかりやすい解説

そうめん

小麦粉食塩と水を加えて練り,綿実油などを塗り込みながら伸ばして千切りにし,天日で乾燥したもの。機械そうめんと手延べそうめんがある。機械そうめんは製麺機械を用いて乾麺と同様につくり,最後の切り出しのとき幅 0.6~1.2mmの線状にする。手延べそうめんには,兵庫県の播州そうめん,奈良県の三輪そうめんなどがある。農家の副業として厳寒期に生産される乾燥麺の一種である。古くから独特の方法でつくられ,その風味が珍重される。瀬戸内海沿岸で生産される蛋白質のやや多い小麦粉を用い,梅雨明けまで「厄」と称し倉庫に積み熟成させる。この間に油の作用で蛋白質が徐々に変化して独特の風味が形成される。

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百科事典マイペディア 「そうめん」の意味・わかりやすい解説

そうめん(素麺)【そうめん】

ごく細く作った麺類の一種。奈良時代に中国から伝わったといわれる。小麦粉を水と少量の塩でこねて細切りにし,さらに綿実油またはゴマ油をつけながら手でひきのばし(手延べ),乾燥する。近年は機械で作られるものが多い。熱湯でゆで冷水にさらし,つけ汁で食べたり(冷やそうめん),煮込んで食べ,吸物の実にもする。奈良県の三輪そうめん,兵庫県の播州(ばんしゅう)そうめん,愛媛県の五色そうめんなどが有名。
→関連項目うどん(饂飩)

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デジタル大辞泉プラス 「そうめん」の解説

そうめん

古典落語の演目のひとつ。「丈長そうめん」とも。上方では「そうめん食い」と題する。

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