日本大百科全書(ニッポニカ) 「ユズ」の意味・わかりやすい解説
ユズ
ゆず / 柚
柚子
[学] Citrus junos Sieb. ex Tanaka
ミカン科(APG分類:ミカン科)の常緑半高木。柑橘(かんきつ)の一種で、中国揚子江(ようすこう)上流の原産といわれ、日本への渡来は朝鮮半島を経由したものと考えられているが不明である。山口県、徳島県には野生林がある。柑橘中、耐寒性がもっとも強く、また耐乾、耐湿性も強く、北は青森県の海辺まで生育する。樹は直立性で枝梢(ししょう)に刺(とげ)がある。葉の翼は非常に大きい。花は一般に頂生で、単生し、白色または淡紫色を帯びる。雄しべは22本内外、雌しべは雄しべと同長かやや短い。果実は球形で縦径6.5センチメートル、横径7.5センチメートル、重量130グラム内外、初冬から春にかけて熟す。果面は黄色で大小のしわがあり、果皮は厚く、内側は海綿状を呈しむきやすい。袋は約10個、果肉は多汁で酸味と香気が強い。種子は約20粒、胚(はい)は白くて多い。ただし、品種タダニシキ(多田錦)のような種子なし品種もある。温州(うんしゅう)ミカンなどの台木として用いられているが、カラタチ台の普及につれ減少してきた。なお、イッサイユズ(一歳柚子)としてユズ近縁種が市販されているが、これらの多くは花を観賞するハナユ(花柚)で樹高2メートル、若木でも果実をつけ、花は香り強く、果実は70グラム前後。ユズの代用となり、家庭果樹としてよい。
[飯塚宗夫 2020年10月16日]
食品
ユズの果実は酸味が強く、そのままでは生食に向かないが、香りがよく、果皮とともに多くの料理に用いられる。果汁は焼き肉、焼き魚、炊き込みご飯などに香味を添え、また果皮は細切りして吸い物に浮かせ、煮物にかけるなど、広く用いられる。果皮、果肉に砂糖を加え、煮つめて柚(ゆ)ねりをつくる。また、果汁を用いて柚(ゆず)みそ、柚餅(もち)などもつくられる。起源は明らかではないが、冬至の日に果実を風呂(ふろ)に入れ柚湯を楽しむ風習があり、『東都歳事記』(1838)などにもみえる。
[飯塚宗夫 2020年10月16日]