日本大百科全書(ニッポニカ) 「井上良雄」の意味・わかりやすい解説
井上良雄
いのうえよしお
(1907―2003)
神学者、評論家。兵庫県生まれ。京都帝国大学独文科卒業。1930年(昭和5)同人雑誌『KYU』に最初の文芸評論『宿命と文学について』を発表。のち『詩と散文』『磁場』などに評論を書き継ぎ、『芥川龍之介(あくたがわりゅうのすけ)と志賀直哉(なおや)』(1932)は歴史的文献として評価されている。日本共産党に接近して投獄され、転向後評論家としての筆を折る。北川冬彦夫人であった仲町貞子の影響を受けてキリスト教信者となる。東京神学大学教授を約20年務めた。文芸評論集として梶木剛編『井上良雄評論集』(1971)、訳書にK・バルト著の『教義学要綱』(1951)、『和解論』(1959)、ほかに『神の国の証人 ブルームハルト父子』(1982)の著がある。
[栗坪良樹]
『カール・バルト著、井上良雄訳『和解論』4冊(1959~61・新教出版社)』▽『梶木剛編『井上良雄評論集』(1971・国文社)』▽『井上良雄著『神の国の証人 ブルームハルト父子』(1982・新教出版社)』