日本大百科全書(ニッポニカ) 「亜鉛中毒」の意味・わかりやすい解説
亜鉛中毒
あえんちゅうどく
工場の作業者にみられる酸化亜鉛のフューム(煙霧状粉末)を吸入しておこる亜鉛熱(金属熱)に代表される中毒で、職業病の一種。フューム吸入後2~8時間で、インフルエンザ様の悪寒(おかん)とともに発熱し、咳(せき)、頭痛、疲労感、発汗などの症状を伴うが数時間で回復する。溶接、電池製造、めっき従事者などにみられる。なお塩化亜鉛フュームを吸入すると肺炎をおこす。労働衛生上、許容濃度は気中で酸化亜鉛として1立方メートル中5ミリグラムとされている。また、亜鉛熱のような急性の吸入毒性ばかりでなく、経口毒性も知られる。亜鉛は水に溶けやすいので、缶詰の酸性飲料中にめっきに用いた亜鉛が溶け出すことがある。40ppmで金属味を感じ、675~2280ppmで吐き気を催す。大量の亜鉛を摂取すると、3~12時間後に発熱、嘔吐(おうと)、下痢などの症状をおこす。許容濃度は飲料水中で1ppmとされている。
[重田定義]