伊勢の御田植(読み)イセノオタウエ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「伊勢の御田植」の意味・わかりやすい解説

伊勢の御田植
いせのみたうえ

三重県伊勢市の皇大(こうたい)神宮(内宮(ないくう))、および別宮(べつぐう)の志摩の伊雑宮(いざわのみや)の神田(みとしろ)の田植行事。内宮では明治に入って中絶したが大正末に復活して5月中旬(日は不定)、伊雑宮では6月24日に行う。内宮の延暦(えんりゃく)23年(804)の儀式帳には田植の記述がなく、建久(けんきゅう)3年(1192)の儀式帳に出てくるので、平安中期ごろから行われたようである。この田植行事は田楽(でんがく)を採用したもので、まず早苗(さなえ)を祀(まつ)って早乙女(さおとめ)に渡し、笛、摺簓(すりささら)、腰鼓(こしつづみ)、大小鼓で囃(はや)し、田植唄(うた)を歌って植えるものであった。伊雑宮では鳥刺舞(とりさしまい)も入っている。しかし、現在では田楽の技芸は不完全である。なお内宮と同一の御田植が、近くの猿田彦(さるたひこ)神社で5月5日に行われている。

[新井恒易]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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