日本大百科全書(ニッポニカ) 「伝聞例外」の意味・わかりやすい解説
伝聞例外
でんぶんれいがい
刑事訴訟において、伝聞証拠禁止の原則(伝聞法則)が作用しない場合の一つとして、伝聞証拠が例外的に許容される場合をいう。刑事訴訟法は、第320条1項で伝聞法則を定めているが、反対尋問権の行使にかわる信用性の情況的保障があり、かつ、それを証拠とする必要性がある場合に、例外として、伝聞証拠に証拠能力を認めている(同法321条以下)。
法律は、こうした狭義の伝聞例外のほか、広い意味での伝聞例外も認めており、伝聞法則不適用の場合および非伝聞の場合にも伝聞証拠が許容される場合を規定している。伝聞法則が不適用な場合とは、たとえば証人尋問調書のようにすでに反対尋問の機会が付与されている場合(同法321条2項)、当事者の同意により反対尋問権が放棄されている場合(同法326条)、被告人自身の供述であって反対尋問が無意味な場合(同法322条)などであり、伝聞法則が適用されない結果として、伝聞証拠が許容されているものである。また、非伝聞の場合とは、たとえば、「被告人の犯罪事実に関する証言を行ったAが、これと矛盾する供述を法廷外でしていた」とするBの供述は、犯罪事実を立証するための証拠であれば伝聞証拠となるが、そうではなくAの法廷証言が信用できないことの証拠としてならば非伝聞となり、証拠能力が認められる(同法328条)などの場合である。
[田口守一]