その見聞した事実についての証人の供述から、訴訟資料(証言)を得る証拠調べ。
挙証者(自分の有利に事実を証明しようとする当事者)は、立証事項を明示し、証人を指定して証人尋問の申し出を行う(日本の国家権力に服する者は特別の定めがある場合を除き証人義務を負う)。裁判所は、証人尋問を行うときは、期日に証人を呼び出す。場所は受訴裁判所の法廷が原則である。期日において、裁判長が出廷した証人の人違いでないことを確かめ(人定(じんてい)尋問という)、宣誓をさせる(ただし宣誓は証人尋問終了後のこともある)。同一期日に数人の証人を尋問するときは、原則として、あとに尋問する証人を退廷させて1人ずつ尋問する(隔離尋問)。ただし、在廷させることもできるし、必要あるときは対質(証人同士を向かい合わせて、互いに自分の証言が正しいことを主張させること)させることもできる。尋問は、証人尋問の申し出をした当事者による主尋問、相手方による反対尋問、必要があれば、再主尋問、再反対尋問の順で行われ、これに裁判長による補充尋問、介入尋問が加わる。裁判長は必要と認めれば当事者の意見を聞いて尋問の順序を変更し、あるいは、不要・不当な当事者の尋問を制限できる。陪席裁判官は裁判長に告げて尋問できる。なお、簡易裁判所の手続では、口頭の尋問にかえ、証人に書面を提出させることができる。
[本間義信]
(1)証人尋問には、公判期日における証人尋問のほか、公判期日外の証人尋問がある。公判期日外の証人尋問にも、裁判所内での証人尋問と裁判所外での証人尋問とがある。裁判所外での証人尋問(刑事訴訟法158条)は、裁判所が証人の重要性、年齢、職業、その他の事情と事案の軽重を考慮して、当事者・弁護人の意見を聞き必要と認めるときに裁判所外に証人を召喚しまたは証人の現在場所で行う(同法158条1項)。当事者・弁護人はあらかじめ尋問事項を知る機会が与えられ、また、必要な事項の尋問を請求することができる(同法158条2項・3項)。いわゆる所在地尋問であり、たとえば証人が病気の場合の臨床尋問などがこれである。裁判所内での公判期日外の証人尋問(同法281条)は、たとえば証人が突然外国へ出張することになり次回公判期日まで待つことができない場合等に適用がある(なお、その他、捜査段階において当事者が裁判官に請求する証人尋問もある。同法179条、226条、227条)。
(2)証人尋問をするには、まず証人の人定質問が行われ(刑事訴訟規則115条)、証人の氏名、年齢、住所、職業等を質問する。ただし、2000年(平成12)の刑事訴訟法改正により、これらの事項を明らかにすることにより、証人に危害が加えられるおそれがある場合には、裁判長は証人の住所等についての尋問を制限することができる(刑事訴訟法295条2項)。人定質問に続いて、証人に宣誓をさせ(同法154条)、偽証罪の告知をし(刑事訴訟規則120条)、そのうえで尋問する。尋問の順序として、法律はまず裁判官が尋問することとしているが(刑事訴訟法304条1項)、実務では、刑事訴訟規則第199条の2が定める英米法に由来する交互尋問制により、当事者がまず尋問するという交互尋問が実施されている。交互尋問は、最初に、証人の尋問を請求した者が主尋問を行い、ついで相手方が反対尋問を行い、さらに請求者が再主尋問を行うという方式で行われる。当事者の尋問が終わると裁判長により補充尋問が行われるのが通常であるが、必要と認めるときは裁判長はいつでも当事者の尋問を中止させ自ら尋問することができる(刑事訴訟規則201条1項)。
(3)被害者等の証人尋問については、証人保護の要請から、2000年の刑事訴訟法改正により、第一に、いわゆるビデオリンク方式の証人尋問が可能となった。すなわち、裁判所は、検察官および被告人または弁護人の意見を聞き、公判廷以外の同一構内にある場所に証人を在席させ、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話することのできる方法(ビデオリンク方式)によって尋問することができることとなった(刑事訴訟法157条の6第1項)。これに対して、2016年の刑事訴訟法改正により、上記の同一構内に限ったビデオリンク方式が改められ、同一構内以外の場所(たとえば遠隔地の裁判所)でのビデオリンク方式による証人尋問も可能とされた(同法157条の6第2項)。たとえば、証人が遠隔地に居住し、その年齢・職業・健康状態等の事情により、同一構内に出頭することが著しく困難であると認められる場合などである。第二に、被告人や傍聴人の面前で証言することの精神的負担を軽減するため、証人と被告人や傍聴人との間に衝立(ついたて)などの遮蔽(しゃへい)措置をとることができることとなった(同法157条の5)。第三に、証人が著しく不安または緊張を覚えるおそれがある場合には、適当な者を証人に付き添わせる(証人付添人)ことができるとされた(同法157条の4)。さらに、2007年の刑事訴訟法改正により、性犯罪等一定の事件の場合に、被害者証人の氏名、住居その他被害者を特定させる事項を公開の法廷で明らかにしない決定(被害者特定事項の秘匿)をすることができることとなった(同法290条の2)。
[田口守一 2018年4月18日]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…なお刑事事件の証人に関しては,その出頭を確保し証言が不当な影響を受けないようにするため〈証人威迫罪〉(刑法105条の2)が設けられるとともに,証人が他人から身体または生命に危害を加えられた場合,国が給付を行うことを定めた〈証人等の被害についての給付に関する法律〉が制定されている。
[証人尋問]
証人に対しては,まず裁判長が人違いでないかどうかを確かめるための〈人定尋問〉を行い,宣誓をさせ,偽証の罰があることを警告する。尋問は,民・刑事とも証人の取調べを請求した当事者が初めに〈主尋問〉を行い,続いて相手方当事者が〈反対尋問〉を行うという〈交互尋問〉の方式を採るのが通常である(民事訴訟法202条。…
※「証人尋問」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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