佐敷太郎峠(読み)さしきたろうとうげ

日本歴史地名大系 「佐敷太郎峠」の解説

佐敷太郎峠
さしきたろうとうげ

近世の薩摩街道中の難所で、たきうえ(現田浦町)道河内みちがわち村の間にある峠。赤松太郎あかまつたろう峠・津奈木太郎つなぎたろう峠とともに三太郎の嶮として恐れられた。「覚兼日記」天正一二年(一五八四)三月二三日条に「佐敷太郎之峠へ御登被成、方角御遠見共也」とあり、島津義久が峠に登っている。難所であったが、ここからの景観も著名で、「万葉集」巻三にある「葦北野坂の浦ゆ船出して水島に行かむ浪立つなゆめ」の野坂のさかの浦に比定する説もある。「国誌」は佐敷垂尾坂と記し、「古ノ所謂野坂也、土地堅硬ニシテ小木ノミアリテ野ノ如キ故名トスル歟、登臨スレハ遠近海江島嶼山渓ノ風光筆舌ニモ及ヒ難キ佳景也」と記す。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

世界大百科事典(旧版)内の佐敷太郎峠の言及

【三太郎越】より

…熊本県八代市日奈久と水俣市との間にある鹿児島街道の赤松太郎峠,佐敷太郎(さしきたろう)峠,津奈木太郎峠の総称。九州山地西端,八代海に臨む難所として知られ,藩政時代薩摩藩の参勤交代路で,西南戦争の西郷軍もこの峠越えに難渋した。…

【田浦[町]】より

…熊本県南西部,芦北郡の町。人口5758(1995)。八代海に臨み,北東は八代市に接する。九州山地南西端にあたる山地が海岸まで迫り,平地は田浦湾岸にみられるにすぎない。赤松太郎・佐敷太郎両峠が北と南にあり,古くは交通の難所であったが,現在は鹿児島本線,国道3号線が通じる。山麓の傾斜地ではアマナツの栽培が盛んで,1936年以来,電極,カーボンブラックなどの製造業も立地し,製品は海外にも輸出されている。海岸付近は芦北海岸県立自然公園に属する。…

※「佐敷太郎峠」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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