侍給ぶ(読み)はべりとうぶ

精選版 日本国語大辞典 「侍給ぶ」の意味・読み・例文・類語

はべり【侍】=給(とう)ぶ[=たまう・=たぶ]

(「(て)ある」をかしこまった気持で丁重に表現する「はべり」に、尊敬補助動詞「とうぶ(たまう・たぶ)」の付いたもの。→語誌(1)) 話し手敬意を払う必要のある人物動作について、より上位の聞き手に対して述べる場合に用い、その動作主を「…(で)あられる」と「とうぶ(たまう・たぶ)」で敬うとともに、その「ある・ている」を聞き手に対し「はべり」の形を用いて丁重に表現したもの。補助動詞的に用いることも多い。…(て)おりなさる。ただし、「とうぶ」が形式的になって、あまり動作主への敬意の強く感ぜられない場合もある。
※宇津保(970‐999頃)春日詣桂川わたりに興ある所をもて侍りたうぶを、そこになむ、花見給へんとて日ごろ侍りたうぶなり」
源氏(1001‐14頃)橋姫「『今となりては、心苦しき女子どもの御うへをえ思ひ捨てぬ』となむ歎き侍りたまふ」
[語誌](1)中古、対話敬語の「はべり」に尊敬語の付くことはないが、この表現は、「はべり」の(一)①の性格の残っているものに「とうぶ」などの付いて成立したものであろうとする説がある。中古前期から中期ごろまで、改まった、時に古風な堅苦しい表現として、主として男性の会話や消息に慣用されたもののようである。
(2)円珍筆「病中言上書」の「雲上人波見等え参之太布末之久波 布奈利」を、「雲上人は皆え参じ給ぶまじく侍べん給ぶなり」と解説する吉沢義則説に従えば、この用法の早い用例とみることができる。
(3)「宇津保‐国譲下」に「簀子(すのこ)に御座(おまし)参りて、左衛門督の君、宰相中将、左大弁などはべり給て」という、地の文に用いた用例がある。「さぶらひ給ふ」とほぼ同義のまれな例か、あるいは、「さぶらふ」を「侍」と書いたところから生じた、誤写などに起因するものか。

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