日本大百科全書(ニッポニカ) 「係船設備」の意味・わかりやすい解説
係船設備
けいせんせつび
船の係泊に用いる設備の総称。船の係泊の方法は、錨(いかり)にかかる錨泊(びょうはく)と、岸壁や桟橋に係留する岸壁(桟橋)係留および係船浮標に係留する浮標係留の三つの方式に大別される。係船設備のおもなものは、錨および錨鎖(びょうさ)、ウィンドラスやキャプスタン、係留索、ボラード(双係柱)およびビット(単係柱)、フェアリーダーなどがある。これらの大きさ(寸法)や数量、および出力(能力)については、船の大きさに応じて船舶設備規程で決められている。
錨鎖は約25メートルを1節としてシャックルという器具で継ぎ合わせてあるが、浮標係留では船首錨に接続する錨鎖を1節だけ錨に連結して残し、第2節目からを係留鎖として浮標に係止して係留索と併用する。岸壁係留では係留索を主体に係留し、必要に応じて錨を補助に使用して係留する。これらの係留索を甲板上で係止するために用いるのがビットまたはボラードであり、係留索を船外に導きやすくするとともに船側で索が過度に屈曲し摩擦損傷するのを防止するのがフェアリーダーである。また係船設備の付属具として、係留索を陸に渡すため、係留索の先に連結し船上から投ずるヒーブライン(投細索(なげほそさく))、係留索をビットまたはボラードに係止するときの補助として索の緩みを押さえるストッパー、係留中船側と岸壁との接触による損傷防止に用いる緩衝用のフェンダー、係岸中、陸上からのネズミの侵入を防止するため係留索の中間に設置されるラットガードなどがある。
[岩井 聰]