船を接岸係留して乗客の乗り降り,貨物の積卸しを行うための構造物。主として,木材,鋼材,鉄筋コンクリート製の杭で作られる脚柱と,これで支えられた床版および陸岸の護岸とを結びつける渡橋とからなり,直接背後の地盤を支え,海岸側を垂直面にして船を接岸できるようにした岸壁や物揚場とは異なる。桟橋のうち陸岸に平行なものを横桟橋shore-bridgeといい,横桟橋の渡橋が長い場合にはデタッチトピアdetached pierと呼ぶ。
桟橋は岸壁と異なり直接背後の地盤の土圧を受けないから,地震の際にも大きな水平外力を受けることがなく,また,粘土層からなる軟弱地盤においても脚柱を長くすればよいので,岸壁,物揚場のように基礎地盤の支持力についての制約は少なく,大水深のところで経済的構造物となる。また,流れをせき止めることがないので,河岸などでも用いられる。一方,船の接岸時の衝撃力に対しては抵抗が弱く,このため,船との接触部分に衝撃力を吸収するゴム製などの防玄材を用いることが多い。また,脚柱であるから,船によって水平力を受けたとき横方向に変位することを避けることはできない。むしろ,防玄材と脚柱の変位を許して,衝撃力を吸収したほうが得策であることがあり,杭を垂直に打ち込んで作られる直杭桟橋はこうした考えで設計される。変位を小さくしたい場合には斜め杭を打設して,斜め組杭式桟橋とする。桟橋にはこのように脚柱の構造から,上記のほかに円筒または角筒式,橋脚式桟橋に分類される。なお,脚柱の上に係留施設のみを備えたものはドルフィンdolphinと称し,桟橋とは区別する。また脚柱をもたず,ポンツーンpontoonという箱形の浮体を,係留鎖もしくは杭やドルフィンで位置を安定させたものは浮桟橋pontoon bridgeと呼ばれる。浮桟橋は地震による破壊や潮位の変動による荷役の困難さはないが,波浪に弱いので静穏な水面など利用範囲は限られる。
執筆者:長尾 義三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
船舶を係留する係船施設の一種で、脚柱構造物に桁(けた)を渡し、その上に床版を張る形式をもつもので、岸壁とは構造的相違があるだけで機能的には変わりはない。平面形状では、陸岸から直角に突き出し幅広い桟橋構造とする突堤桟橋と、陸岸に接して桟橋を平行につくる横桟橋、陸岸から離れた適当な水深の所に幅の狭い桟橋を設ける島桟橋とがある。また脚柱の構造により杭(くい)式、筒柱式、橋脚式に分類される。
桟橋は軽量構造であるため、軟弱地盤の箇所にも適しており、耐震構造をとることも比較的容易である。岸壁と異なり前面水深を増加する措置がとりやすく、水流を妨げず反射波を抑制するので港内の動揺を小さくさせる。しかし、船舶が接岸するときの衝撃に対しては比較的弱く、防衝工の検討が必要であり、また荒天時の波で上部の床版に下から揚圧力が作用し、被害を受けやすい。一般に埠頭(ふとう)の単位面積で工費を比較すると、桟橋は割高となる。
[堀口孝男]
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