日本大百科全書(ニッポニカ) 「先天性水痘症候群」の意味・わかりやすい解説
先天性水痘症候群
せんてんせいすいとうしょうこうぐん
congenital varicella syndrome
妊娠初期の8~20週ころまでに母体が水痘あるいは帯状疱疹(ほうしん)にかかり、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV:varicella-zoster virus)が経胎盤的に胎児に感染し、奇形のほか全身性の感染症状を生ずる症候群。胎児水痘症候群あるいは先天性水痘・帯状疱疹ウイルス感染症ともよばれ、CVSと略称される。また、水痘は俗に水疱瘡(みずぼうそう)ともよばれる。ワクチンの普及により成人のほとんどがウイルス抗体をもっており、妊婦も例外ではないため発症はごくまれである。しかし妊婦が水痘ウイルスに感染し母体に免疫不全などを伴う場合は、発疹(ほっしん)や発熱、あるいは咳嗽(がいそう)(咳(せき))や呼吸困難を伴う水痘肺炎に陥りやすく、重篤となり死に至ることもある。しかし、20週以降の妊娠後期に母体が感染した場合は胎児の奇形など先天異常を伴うことはほとんどないとされる。
症状として、子宮内発育遅延、低体重出生、四肢形成不全、帯状疱疹に伴う皮膚瘢痕(はんこん)、小頭症、小眼球症や白内障および網脈絡膜炎ほか眼球の異常や発達障害などがみられる。また妊娠後期の感染で、出生時には無症状でも、まれに乳幼児期になって帯状疱疹が生ずる例もある。
[編集部 2016年7月19日]