帯状疱疹(読み)タイジョウホウシン

精選版 日本国語大辞典 「帯状疱疹」の意味・読み・例文・類語

たいじょう‐ほうしんタイジャウハウシン【帯状疱疹】

  1. 〘 名詞 〙 皮膚神経の分布に沿って帯状に生じる水疱性発疹。水痘帯状疱疹ウイルスの感染により生じ、痛みを伴う。

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百科事典マイペディア 「帯状疱疹」の意味・わかりやすい解説

帯状疱疹【たいじょうほうしん】

一般にヘルペスとも呼ぶ。疱疹の一種。水痘・帯状疱疹ウイルスの感染時,知覚神経節に潜伏していたウイルスが,再活性化することによる皮膚病。神経系路に沿って,片側性・散発性に米粒〜アズキ大の紅斑および水疱を生じ,数日後に痂皮(かひ)(かさぶた)を作り,色素沈着を残して治癒(ちゆ)する。全身違和感,発熱などの前駆症状を呈することもある。側胸・腹部に多いが全身いずれの部位にも発生し,局所に神経痛やリンパ節腫脹(しゅちょう)を伴う。健康な状態で発症することもあるが,多くの場合,免疫能力の低下した状態やストレスなどによって発症するとされる。治療にはアシクロビル,ビダラビンなどの抗ウイルス薬やビタミンB(/12),鎮痛薬を投与する。痛みが激しい場合は神経ブロック法を,全身症状が激しい場合は免疫グロブリン輸液などを用いる。
→関連項目脊髄炎ソリブジン膿疱ペインクリニック肋間神経痛

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家庭医学館 「帯状疱疹」の解説

たいじょうほうしん【帯状疱疹 Herpes Zoster】

[どんな病気か]
 水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルスに初めて感染した場合、その症状は水ぼうそう(水痘)となりますが、帯状疱疹は水痘に感染した人、水痘ワクチンを接種した人に発症します。
 初めての感染で、ウイルスは知覚神経節に潜伏します。そして過労や免疫(めんえき)が低下した状態になると、潜伏していたウイルスがはたらきだし(再活性化し)、知覚神経を通って、その知覚神経が分布する範囲の皮膚に帯状に疼痛(とうつう)をともなう発疹(ほっしん)(虫刺されのような発疹と水疱(すいほう))をおこします。ほかの人から感染して発症する病気ではないのです。
[症状]
 発疹が現われる1週間前から神経痛のような痛みが生じ、つぎに神経の走行にそって帯状に虫刺されのような発疹ができます。その後、水疱と膿疱(のうほう)ができ、約2~3週間でかさぶたとなって治癒(ちゆ)します。
 頭痛をともなうこともあり、重症の場合は、発熱後、水痘のような発疹が全身にできます。
 耳からあご、くびにかけての帯状疱疹では顔面神経まひを、外陰部のものでは尿閉(にょうへい)をおこすことがあります。
 高齢者や糖尿病患者では、帯状疱疹後神経痛(たいじょうほうしんごしんけいつう)(帯状疱疹にともなう痛みが治った後も続くもの)を残しやすくなります。
[検査と診断]
 血清中の水痘・帯状疱疹ウイルス抗体価(こうたいか)(抗原こうげん)を攻撃する抗体の量)が上昇していること、発疹部からウイルス性巨細胞、水痘・帯状疱疹ウイルス抗原が証明できれば診断がつきます。
[治療]
 抗ウイルス薬(アシクロビル錠)の内服が一般的ですが、軽症の場合は抗ウイルス薬(ビダラビン)を外用します。免疫不全(白血病(はっけつびょう)やエイズなど)の人は、これらの薬剤を点滴しなければなりません。
 痛みを抑えるためには、非ステロイド系消炎鎮痛薬、ビタミンB12副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン(ステロイド)薬の内服を同時に行ない、疼痛(とうつう)が強い場合は神経ブロック(神経に麻酔を注入)を行ないます。局所には非ステロイド系消炎剤の外用、または細菌感染の予防のため、抗生物質を外用します。
 できるだけ早い時期に抗ウイルス薬を使うことがたいせつです。

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改訂新版 世界大百科事典 「帯状疱疹」の意味・わかりやすい解説

帯状疱疹 (たいじょうほうしん)
herpes zoster

水痘・帯状疱疹ウイルスによる感染症。ヘルペスの一種。初感染の場合には水痘(水疱瘡)となるが,その際にウイルスが神経節に潜伏し,数十年を経て活性化して,神経を伝わって皮膚に至り,そこでウイルスが増殖して水疱を形成するのが帯状疱疹である。したがって,普通はある神経の分布領域内に限って水疱の発生がみられ,片側性である。原発部から離れた体部にみられる発疹を汎発疹と呼ぶ。体幹にできると帯状の配列をとる。体幹,顔面に多く,とくに三叉(さんさ)神経の第1枝領域である前額部に好発する。はじめ神経痛様の痛み,あるいは皮膚がびりびりするなどといった異常感が1週間ほど続き,突然に浮腫性の紅斑上に小水疱が多発する。1週間前後で水疱は増加し,一部は膿をもって膿疱化するが,その後は痂皮(かさぶた)となって乾燥し,ほぼ3週間で治癒する。神経痛は,一般に発疹が軽快するとともに消失するが,高齢者では,数ヵ月あるいは年余にわたって続くことがあり,帯状疱疹後神経痛と呼ばれる。顔面ではまれに顔面神経麻痺を残すことがあり,眼瞼部の帯状疱疹は角膜を侵して視力の低下をきたすこともある。初期の水疱内容からはウイルスが検出されるが,普通は成人には伝染しない。しかし水痘にかかったことのない小児には伝染することがあり,この場合には,帯状疱疹ではなく水痘となる。治療は,軽症例では非ステロイド系消炎鎮痛薬の内服,外用を行うが,高齢者や免疫不全があり,汎発疹のみられる場合などには,アシクロビルなどの抗ウイルス薬の内服・点滴静脈注射を行う。また疼痛が強い場合には,交感神経ブロック,持続硬膜外ブロックなどを行うこともある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「帯状疱疹」の意味・わかりやすい解説

帯状疱疹
たいじょうほうしん

水痘・帯状疱疹ウイルスの感染によっておこる水疱性皮膚疾患の一種。このウイルスは免疫のない人に感染すると水痘(水疱瘡(みずぼうそう))を生じ、免疫のある人では帯状疱疹として発症するので、小児では水痘、成人では帯状疱疹をみることが多い。一定の末梢(まっしょう)神経支配領域に神経痛とともに発赤を伴った小水疱が集まった病変が生じ、それが神経に沿って帯状に並ぶのが特徴で、同時にリンパ節が痛んで腫(は)れる。神経痛は発疹と前後して現れ、その程度は軽い痛み、かゆみ、知覚過敏程度のものから激痛に至るまでさまざまで、激痛が疱疹後神経痛として長期間続くことがある。水疱は一部は膿疱(のうほう)となり、そのまま乾いて固まったり、びらん、痂皮(かひ)(かさぶた)を経て、普通は3週間前後で治る。侵される神経では顔、頭部の三叉(さんさ)神経、胸背部の肋間(ろっかん)神経が多いが、全身いずれの神経領域にもみられる。三叉神経ではとくに痛みが強く、眼球も侵されるので重症である。高齢者や免疫不全を伴う基礎疾患のある人では、全身に水痘様の発疹を伴うことがあり、水疱が深い潰瘍(かいよう)となったり、疱疹後神経痛が長期間残ることがある。治療としては、安静を保ち、鎮痛・解熱・消炎剤、ビタミンB1、B12、二次感染防止のため抗生物質軟膏(なんこう)、目にはIDU眼軟膏、点眼薬を投与する。重症例にはγ‐グロブリン注射、抗ウイルス剤としてアシクロビル、インターフェロン、アラビノシッドが用いられる。疱疹後神経痛には神経ブロック療法も行われる。

[野波英一郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「帯状疱疹」の意味・わかりやすい解説

帯状疱疹
たいじょうほうしん
herpes zoster

帯状ヘルペスともいう。一定の神経支配領域の皮膚に,片側性に紅暈,中心臍窩のある小水疱が帯状あるいは斑状に多発する疾患をいう。水痘・帯状疱疹ウイルスの感染で起る。2~10歳頃に水痘 (水ぼうそう) に感染したときのウイルスが,長期間体内に潜伏し,再活性化して発病すると考えられている。症状はさまざまであるが,初め透明の水疱がやがて膿疱となり,ついで壊疽性となり,潰瘍化することがある。胸部の肋間神経に沿って生じることが最も多いが,三叉神経の第1枝領域に生じることもあり,その場合はしばしば激しい頭痛を伴い,目の角膜が侵されることもある。全経過2~4週間で治癒するが,老人の場合,治癒後1年以上,後遺症として神経痛が残ることがある。定型的な帯状疱疹以外に全身に小水疱が散発するものがあり,これを汎発性帯状疱疹という。この汎発性帯状疱疹や,普通の帯状疱疹が反復して起る患者の場合,その背景に免疫不全のあることが多い。

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世界大百科事典(旧版)内の帯状疱疹の言及

【水痘】より

…伝染力がつよく,6月ころに小流行をみることがある。ヘルペスウイルスのなかまである水痘‐帯状疱疹ウイルスvaricella‐zoster virusの感染によりおこる。ウイルスは,唾液の飛沫などによって気道から進入し,ウイルス血症をおこして,皮膚に紅斑,水疱を生ずる。…

【潜伏感染】より

…宿主生体のなかで,病原体が潜伏感染を続けて,終生臨床症状をあらわすことなく過ごすこともあるが,宿主生体の抵抗力が低下した際,再発して臨床症状を認めることも少なくない。このような例として,単純ヘルペス感染症,水痘と帯状疱疹,サイトメガロウイルス感染症,梅毒,結核などがあげられる。幼児期の単純ヘルペスは初感染として歯肉口内炎やヘルペス湿疹となり,ウイルスは三叉(さんさ)神経節に潜伏感染して,再発すると口唇ヘルペス,角膜炎,脳炎となる。…

【ヘルペス】より

…ヘルペスウイルスによる感染症で,疱疹とも呼ばれる。単純ヘルペスherpes simplexと水痘および帯状疱疹とに大別されるが,ここでは単純ヘルペスについて述べる。単純ヘルペスは,主として口唇,外陰部などに集団をなして小さな水疱を形成し,数日で糜爛(びらん)して乾燥し,1週間前後で治癒する。…

【肋間神経痛】より

…突発的に生ずる肋骨の走行に沿ったつきさすような痛みで,外傷,感染,圧迫,寒冷などにより生ずると考えられ,肋骨の下面を押すと圧痛がみられ,咳や深呼吸により増強する。ウイルス性疾患である帯状疱疹も肋間神経痛をきたすことがあるが,同時に神経の支配領域に相当する部位に小水疱をもった発疹を伴うことが特徴である。肋間神経痛と鑑別すべきものとしては,骨疾患のための骨痛や脊髄疾患などのほかに,胸腔内および腹部臓器の疾患のための痛みがある。…

※「帯状疱疹」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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