出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…そこに7年間勤めたが,しごとの合間に行った理論物理学の研究は,20世紀物理学の基礎を築くことになった。すでに1901年から熱力学および統計力学に関する論文を発表していたが,05年に光量子仮説,ブラウン運動の理論,特殊相対性理論という,根本的かつ革命的理論を立続けに提出したのである。そのため,この年は〈奇跡の年〉といわれる。…
…ここで定数hは,これより少し前に黒体放射スペクトルを説明するのにM.K.E.L.プランクが導入したプランク定数に等しいとアインシュタインは考えた。この仮説(光量子仮説という)に立てば,原子,または固体中に束縛されている電子は,束縛エネルギー以上のエネルギーを光子から受けて外に飛び出すとして,光電効果を説明することができる。すなわちアインシュタインは,光電子の運動エネルギーの最大値Emaxと,入射光の振動数νの間にはEmax=hν-Φなる関係が成り立つと考えた。…
…彼は放射(電磁波)とエネルギーをやりとりして平衡状態になっている空洞の壁を振動子の集合とみなし,この振動子のエネルギーが,エネルギー量子hνを単位としたとびとびの値しかとれないとしたのである(プランクの量子仮説)。これに対しアインシュタインは振動数νの放射そのものがエネルギー量子hνから構成されているとし,光(電磁波)はエネルギーhνをもつ粒子としてふるまうと考えれば光電効果が説明できることを示した(光量子仮説)。そしてこの光量子仮説を原子構造にとり入れることによって,N.H.D.ボーアは,原子の定常状態のエネルギーはとびとびの値しかとらず,原子がエネルギー2の定常状態から1(2>1)の定常状態へ遷移するとき,hν=2-1なる振動数νの光を放出するとして,原子スペクトルの規則性に説明を与えたのである。…
…
[光量子]
プランクの公式の革命的な含意をくみとったのはアインシュタインであった。1905年に彼は論文《光の発生と変換に関する一つの発見法的観点》を書き,振動数νの光はhνというエネルギーの粒子(光量子)の流れであるとして(光量子仮説),こう主張した。すなわち,これまで光はマクスウェルの方程式に従う電磁場の波動であるとされてきたが,光学的観測では〈瞬間的な値ではなしに時間的平均値が問題にされてきた〉にすぎず,波動像が回折,反射,屈折,分散の現象で完全に証明されているとしても〈光の発生や変換に適用したら実験に矛盾することもありうる〉。…
※「光量子仮説」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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