朝日日本歴史人物事典 「入江昌喜」の解説
入江昌喜
生年:享保7.6.21(1722.8.2)
江戸中期の国学者。大坂石灰町商家の出身,父道喜の次男。白沢老人,長翁,獅子童,幽遠窟などと号した。3歳で父を,24歳で兄を亡くし家業を継いだ。しかし国学研究の初志をあきらめず,隠居を機に50歳ころから,学芸に没頭。正味20年余にものした著書には,緻密な語義考証や注釈をはじめ数種の随筆もあり,質量とも目を見張らされる。『幽遠随筆』(2冊,1774)は,巷の雑事に俗語考証などを加え,身辺の事情も自作の歌や俳諧から窺えて味わい深いが,さきに絶版処分となった松木淡々の『俳諧三部書』を引用したとして,発禁となった。『久保之取蛇尾』(3冊,1784)は後刷りも多く,永く行われた考証随筆。奮励努力の人であり,学問に楽しみを見いだす才能に恵まれた人物であった。<著作>『幽遠随筆』(『日本随筆大成』1期16巻),『久保之取蛇尾』(『続日本随筆大成』11巻)<参考文献>森繁夫『入江昌喜翁』,肥田晧三「入江昌喜のこと」(『日本随筆大成』1期16巻付録)
(ロバート・キャンベル)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報