全国黒人向上協会(読み)ぜんこくこくじんこうじょうきょうかい(その他表記)National Association for the Advancement of the Colored People

日本大百科全書(ニッポニカ) 「全国黒人向上協会」の意味・わかりやすい解説

全国黒人向上協会
ぜんこくこくじんこうじょうきょうかい
National Association for the Advancement of the Colored People

略称NAACP。全米黒人地位向上協会(または全米有色人種地位向上協会)ともいう。リンカーンゆかりの地、アメリカのイリノイ州スプリングフィールドで1908年に起こった人種暴動契機に結成された、黒人の市民権擁護、拡大のための運動組織。プログレッシブ(進歩的)な白人と黒人の協同により、09年に全国黒人委員会として発足、10年、全国黒人向上協会という名称がとられた。アメリカ黒人の市民権確立を目ざして1905年に組織されたナイアガラ運動に結集した黒人のほとんどが加わり、デュボイスは8人の執行部のただ1人の黒人として、また、機関誌『クライシス』の編集者として活躍した。リンチ暴動に反対するキャンペーンを精力的に展開し、選挙権剥奪(はくだつ)、居住地域隔離、公立学校の分離差別に対しては法廷闘争で重要な成果を収め、公民権運動の60年代の高揚を準備したほか、黒人の作家・芸術家の活動を奨励したことも注目される。当初急進的と目されたこの組織も、60年代以降のより急進的な諸潮流の台頭によって穏健派とみなされるようになった。99年4月現在2200余の支部に50万余のメンバーが結集している。

[中村雅子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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