八風越(読み)はつぷうごえ

日本歴史地名大系 「八風越」の解説

八風越
はつぷうごえ

鈴鹿山脈の東麓、田光たびかから切畑きりはたを経て、田光川沿いに八風峠(九三八メートル)に至り、近江国片瀬かたせより杜葉尾ゆずりお(ともに現滋賀県永源寺町)に下る鈴鹿越のひとつ。中世、近江今堀いまぼり(現八日市市)を中心とする保内商人が、南の千草ちくさ越とともに、伊勢国桑名と近江国を結ぶ商業路として利用。今堀日吉神社文書には「八風海道」「伊勢道」などとも出る。

大永六年(一五二六)春連歌師宗長は、駿河よりの帰路八風峠を越えた。「宗長手記」には「俄の合戦注進。思ふにかなはぬ世中、引かへし八峯峠になりぬ。(中略)この峠は昔より馬輿とをらぬ子細ありと聞とも、老の足一あしもすゝます。人に負るれは胸いたみいきもたえ、谷にも落入ぬへくおほえはへれは、老のこしかき二三十人、梅戸よりやとひよひて、左右の大石をふまへ、おち滝津波をまたけ、度々心をまとひし。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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