日本大百科全書(ニッポニカ) 「再入植運動」の意味・わかりやすい解説
再入植運動
さいにゅうしょくうんどう
Repoblación スペイン語
中世イベリア半島のレコンキスタ(国土回復戦争)に付随して進められた運動で、レコンキスタの背後を固める一方、新しい占領地の恒久的防衛とその後の社会形成に大きな意味をもった。再入植運動の祖型は、ドーロ川(スペイン語ではドゥエロ川)流域の農民をアストゥリアスとガリシアに移住させて自国の背後を固めた8世紀前半のアルフォンソ1世の政策に求められる。のちにドーロ川以北の平野部の支配が確立されていくと、まず山岳部出身の農民を主体とした再入植と開拓が進められた。ついで征服地の拡大やイスラム教徒の残留という新しい事態が生じると、都市や軍事要衝などを重点的に押さえたり、有力貴族や騎士修道会へ土地を譲与する形での再入植が広くみられた。
再入植運動によって、征服地は新しい生活の場に組み入れられた。たび重なる敗北にもかかわらず、レコンキスタが着実に進展しえたのは、背後に再入植によるキリスト教徒の定着があったからだった。再入植の形態は一様ではなく、時と場所の諸条件によってさまざまに変化し、これが後世の土地所有、経済活動、社会構造などを大きく左右した。また人々は再入植の過程で都市の再建ないしは創設の技術、そして都市がもつ軍事的・政治的重要性を体得していった。この経験はやがてスペイン人のインディアス(新世界)征服のおりに大いに生かされた。すなわち、今日のラテンアメリカ諸国の代表的都市の起源がしばしば征服時代にさかのぼるのは、再入植の伝統を継ぐ移住者が征服と同時に新たな土地に入植し、定着したことによる。
[小林一宏]