日本大百科全書(ニッポニカ) 「写真感光材料」の意味・わかりやすい解説
写真感光材料
しゃしんかんこうざいりょう
photosensitive material
光や放射線がつくる像や影を固定するために使用される材料をいい、ガラス、紙、フィルムなどの支持体上に、写真乳剤を塗布したもの。写真感材、あるいは単に感材などと略称する。露光後ただちに安定した画像を得られるものはなく、かならずなんらかの現像処理が加えられることにより、感材上に画像が形成される。
写真乳剤は、感光性を有するハロゲン化銀その他の微細な結晶粒子を、ゼラチン中に分散させたものをいい、塗布乾燥して写真感材を構成したのちは一般に乳剤とよばれている。ハロゲン化銀の感光理論では、ガーニー‐モットの説が有力で、ハロゲン化銀が光を吸収すると伝導帯電子を生じ、これが感光核(電子トラップ)にとらえられ、ここに可動の格子間銀イオンが引き寄せられ、先の電子と結合して銀原子となり、この繰り返しにより潜像が形成されると説明している。
支持体や観察するときの方法により、フィルム、印画紙などと分類されるほか、用途により映画用、スチル写真用、カラー、モノクローム、X線用などとする方法もあり、通常はこれらを複合して使用している。
感光材料としては青写真用のジアゾ化合物を使うものがあるが、一般的な写真用として使われることは皆無といってよい。
[伊藤詩唱]
『竹田政民・篠原功・草川英昭・広橋亮著『情報記録システム材料』(1989・学会出版センター)』▽『田中益男著『写真の科学』(1992・共立出版)』▽『日本写真学会編『写真工学の基礎 銀塩写真編』改訂版(1998・コロナ社)』