化学的感光材を用いる複写法の一種。シアノタイプともいう。1842年イギリスのハーシェルにより発明された。この種の方法としてはいちばん古く、安価であり、土木、建築、機械などの図面の複写に多用されてきた。感光材料として第二鉄塩と赤血塩(カリウム塩)が使用される。露光すると第二鉄塩は第一鉄塩に変化し、赤血塩と結合してフェリシアン第一鉄となる。これがターンブル青に発色する。複写方法としては、トレーシングペーパーの原図を感光用紙の上に置き、アーク灯や高圧水銀灯などで露光する。フェリシアン第一鉄は水溶性でないので、水洗いすると露光しなかった部分が溶けて青地の中に白線として、つまり陰画として現れる。これを乾燥すれば青写真ができあがる。青地部分への書き込みが見にくいことや、水洗い、乾燥という操作をしなければならない不便な面もあって、現在ではジアゾ複写や普通紙複写機(PPC=Plain Paper Copier)などの複写技術の発達により、実務として利用されることはほとんどなくなっている。
ジアゾ複写は、光分解反応をしやすいジアゾ化合物を感光材に使う。この化合物はアルカリ状態でフェノール類と化合してアゾ染料(赤、黒、セピアなど各種の発色が可能)となる。また、光分解したジアゾ化合物はフェノール類には反応しない。この性質のためにトレーシングペーパーのポジ原稿から直接陽画を得ることができる。その方式は、ジアゾ化合物やフェノール類の種類、現像剤や現像方法の違いによってさまざまであるが、大別すれば湿式と乾式とがある。ただし、水洗いの過程がないので乾燥の手間は省かれる。光分解したジアゾ化合物は無色なので、白地の上に色線が残り、光に対しても安定している。
[玉腰芳夫]
鉄(Ⅲ)塩の感光性を利用した写真法でシアノタイプcyanotypeともいう。1842年,イギリスのハーシェルJohn Herschel(1792-1871)が発明し,1950年ころまで土木,建築,機械などの設計図面の複製用として広く使われた。青写真の感光紙は,紙に塩化鉄(Ⅲ),シュウ酸鉄(Ⅲ)アンモニウム,クエン酸鉄(Ⅲ)アンモニウムなどの鉄(Ⅲ)塩をフェリシアン化カリウム(赤血塩)とともに水に溶解して塗布し,乾かして作る。トレーシングペーパーに図面などを書いた原稿をこの感光紙に密着し,日光,水銀灯,アーク灯などの紫外線光源で焼き付けたのち,感光紙を水洗すると青写真ができる。このとき,原稿の白い部分の下にあった感光性鉄(Ⅲ)塩は光化学変化によって鉄(Ⅱ)塩に変化し,鉄(Ⅱ)塩はフェリシアン化カリウムと反応して水に不溶のターンブルブルーになる。原稿の黒い部分の下にある鉄(Ⅲ)塩は変化しないで水洗の際感光紙から除去される。したがって,青写真の画像は青い背景に白い線や白い文字で描いた画像になる。また,感光性鉄(Ⅲ)塩とフェロシアン化カリウム(黄血塩)を使って感光紙を作ると,逆に未感光の鉄(Ⅲ)塩がフェロシアン化カリウムと反応して青色になる。この場合は白い背景に青い線や文字が描かれる。青写真の感光紙は,安価で工業用感光紙として適性はあるが,感度が低く,また水でぬらして仕上げる必要があるため,近年はジアゾタイプに置き換えられた。
執筆者:友田 冝忠
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鉄(Ⅲ)塩から鉄(Ⅱ)塩への光化学的還元を利用する写真法の代表的なもので,青色画像を形成する.たとえば,シュウ酸鉄(Ⅲ)アンモニウム水溶液(25%)60 mL,赤血塩水溶液(20%)40 mL,シュウ酸ナトリウム水溶液(6%)20 mL,アラビアゴム水溶液(5%)1 mL を混合,紙表面に塗布乾燥し,半透明紙に描かれた原図と重ねておもに紫外光に露光する.感光後,水洗すれば露光部は青に着色し,未露光部は白色のまま残る.露光部に生じた鉄(Ⅱ)塩は,共存する赤血塩によりフェリシアン化鉄(Ⅱ)(ターンブルブルー)を生成し,未露光部の鉄(Ⅲ)塩は水洗で除かれる.上の処方から赤血塩を除いて露光後,黄血塩と反応させることにより,ポジ-ポジ型の青写真を得ることもできる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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