写真印画紙(読み)しゃしんいんがし(その他表記)photographic paper

日本大百科全書(ニッポニカ) 「写真印画紙」の意味・わかりやすい解説

写真印画紙
しゃしんいんがし
photographic paper

写真感光材料のうち支持体に紙を使用し、反射光で画像を観察しうるもの。一般に印画紙とよばれ、構造上からは樹脂コート紙(レジンコート紙)とバライタ紙の2種がある。ほとんどのものが前者で、通常はシート状であるが、ロール状のものもある。モノクローム用は、ネガから被写体と同じ明暗印画(通常白黒)をつくる。

(1)構造 樹脂コート紙は、じょうぶな紙の片面に、紙面の白さを増すための二酸化チタン(チタンホワイト)含有ポリエチレン層、乳剤層、保護ゼラチン層の順に塗布したもので、裏面にもポリエチレン層を塗布して現像液が紙の内部に侵入するのを防止している。永久保存用の高級紙、バライタ紙の場合はチタンホワイト層のかわりに白色硫酸バリウム(バライタ)含有ゼラチン層を塗布し、裏面の塗布は行わない。このため処理液が紙内に侵入するので、より長時間の水洗を必要とする。

(2)乳剤 普通単層で、密着用は塩化銀、引伸し用は塩化銀と臭化銀の混合(クロロブロマイド)、そのほか臭化銀のみのものもある。

(3)コントラスト いろいろなコントラスト(調子)のネガと組み合わせて、よい調子の印画ができるように、軟調から硬調まで1~5のものがある。また多階調(たかいちょう)印画紙といって、感色性とコントラストの異なる二つの乳剤を塗布し、フィルターを使用して焼き分けると、1枚の印画紙で硬調から軟調までに使い分けられる便利なものもある。

(4)表面 一般に使われている印画紙は滑面といって表面が平滑であるが、光沢のないものや、表面に凹凸をつけた微粒面、絹目などとよばれるものもある。後二者では、保護ゼラチン層を省略する場合が多い。

 そのほか、カラーネガから白黒印画をつくるためのパンクロペーパーや、写真植字用の特殊な印画紙などもある。また、カラー写真用(いわゆるカラーペーパー)は、青・緑・赤色光のそれぞれに感光する乳剤層が重ねて塗布してあり、発色現像により色印画が得られる構造となっている。

[伊藤詩唱]

『笹井明他著『カメラ毎日別冊 写真講座2 フィルムと印画紙・その現像』(1981・毎日新聞社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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